経済産業省が定義するDXとは?関連文書マップと最新事例・推進指標

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経済産業省が定義するDXとは?関連文書マップと最新事例・推進指標

経済産業省は、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するため、複数の文書・制度を体系的に整備してきました。本記事は、DX推進を担当する経営企画・DX推進室の責任者の方に向けて、経産省の定義する「DX」を、関連文書マップと最新事例・推進指標の観点から解説します。

この記事でわかること
  • 経済産業省が定義するDXの意味と、IT化との決定的な違い
  • DXレポート・デジタルガバナンス・コード3.0・DX認定制度の関係
  • DX推進指標による自己診断のやり方とアクションへのつなげ方
  • DX銘柄・DXセレクション選定企業に共通する3つの特徴

読了後には、経産省のDX関連文書を実務に活かせる状態を目指します。

目次

経済産業省が定義する「DXとは」?

経済産業省が定義する「DXとは」?

本セクションでは、経済産業省が公表するDXの定義と、単なるIT化との違いを整理します。

  • デジタルガバナンス・コードにおけるDXの定義
  • 単なるIT化(デジタイゼーション)との決定的な違い

国のガイドラインが示す本来のDXの目的について、まずは正しく理解しておきましょう。 

デジタルガバナンス・コードにおけるDXの定義

経済産業省は、デジタルガバナンス・コードでDXを次のように定義しています。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。

ポイントは、デジタル技術を「手段」とし、最終目的が「ビジネスモデル・組織・企業文化の変革」と「競争優位性の確立」にある点です。

単なるIT化(デジタイゼーション)との決定的な違い

IT化(デジタイゼーション)は、紙の書類を電子化する、業務をシステム化するといった「既存業務の効率化」が主目的です。これに対し、DXは「ビジネスモデルそのものの変革」が主目的となります。

経済産業省は、DX銘柄選定企業を「単に優れた情報システムの導入やデータの利活用にとどまらず、デジタル技術を前提としたビジネスモデルそのものの変革および経営の変革にチャレンジし続けている企業」と評価しています。手段としてのIT導入と目的としてのDXは、明確に区別されます。

時系列で紐解く経済産業省のDX関連文書と最新動向

時系列で紐解く経済産業省のDX関連文書と最新動向

本セクションでは、経済産業省のDX関連文書を時系列で整理し、最新動向と主要制度の関係を解説します。

  • DX政策の歴史と文書のアップデート
  • DXレポートシリーズの論点の変遷と「DXレポート2.2」の要点
  • 【最新動向】デジタルガバナンス・コード3.0(2024年):SXとの連動と企業価値の向上
  • DX認定制度の概要と位置付け

国の政策動向を時系列で把握することで、自社が次に取るべきアクションのヒントが見えてきます。 

DX政策の歴史と文書のアップデート

経済産業省のDX政策は、2018年のDXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜を起点に、複数の文書・制度として体系化されてきました。

主要な節目を時系列で並べると、2018年9月「DXレポート」、2019年7月「DX推進指標」、2020年5月「DX認定制度」開始、2020年11月「デジタルガバナンス・コード」、2020年「DX銘柄」開始、2022年「DXセレクション」開始、2024年9月「デジタルガバナンス・コード3.0」となります。

DXレポートシリーズの論点の変遷と「DXレポート2.2」の要点

DXレポートシリーズは、初版(2018年9月、2025年の崖)、DXレポート2(2020年12月、コロナ対応・企業文化変革)、DXレポート2.1(2021年8月、デジタル産業の姿)、DXレポート2.2(2022年7月、デジタル産業への変革に向けた具体的アクション)と、段階的に論点を深めてきました。

DXレポート2.2の要点は3つです。第一に、デジタル投資を「省力化・効率化」ではなく「収益向上」に活用すること。第二に、経営者がビジョン・戦略に加え「行動指針」を示すこと。第三に、経営者の価値観を外部発信し、同じ価値観を持つ同志と新たな関係を構築することです。

【最新動向】デジタルガバナンス・コード3.0(2024年):SXとの連動と企業価値の向上

デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~は、2024年9月19日に経済産業省が公開した最新版です。副題に「DX経営による企業価値向上」を掲げ、企業価値向上との連動を強調しました。

全体像は「DX経営に求められる3つの視点・5つの柱」として再整理されました。3つの視点は「経営ビジョンとDX戦略の連動」「As is-To beギャップの定量把握・見直し」「企業文化への定着」で、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)との一体的推進も方向性として示されています。

DX認定制度の概要と位置付け

DX認定制度は、情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度で、デジタルガバナンス・コードの基本的事項を満たす事業者を国が認定します。

認定基準の概要

認定基準は、デジタルガバナンス・コードの「①柱となる考え方」と「②認定基準」で示されています。経営ビジョン・DX戦略の策定、推進体制の整備、ITシステム・サイバーセキュリティの整備、ステークホルダーとの対話などが評価軸となります。

認定取得は、企業の規模や業種を問わず申請可能で、認定期間は2年間です。期間満了時には更新申請が必要となります。

認定取得のメリット

認定取得のメリットは、第一にDX推進の体制が整っていることへの公的なお墨付きを得られる点です。第二に、DX投資促進税制の適用要件、政府系金融機関の低利融資、中小企業向け支援措置などの公的支援を受けられる点があります。

第三に、ステークホルダー(投資家・取引先・採用候補者)からの評価向上です。DX推進の本気度を示す客観的な根拠として、認定ロゴやプレスリリースで活用できます。

認定企業数の推移

DX認定企業数は、2020年の制度開始以降、年々増加しています。当初は数百社でしたが、現在は累計で数千社規模に達しています。

業種別では、情報通信業・製造業・金融業の比率が高く、企業規模別では中堅・中小企業の取得も増加しています。最新の認定企業一覧はIPAのDX認定制度ポータルで公開されています。

自社の現在地を知る「DX推進指標」と自己診断フレームワーク

自社の現在地を知る「DX推進指標」と自己診断フレームワーク

本セクションでは、DX推進指標による自己診断の方法と、結果から導く次のアクションを整理します。

  • DX推進指標の制度概要と位置付け
  • 自己診断のやり方とキークエスチョン
  • 診断結果から導く次の一手

診断ツールを単なる点数付けで終わらせず、具体的な改善アクションに繋げるためのポイントを解説します。 

DX推進指標の制度概要と位置付け

DX推進指標は、経済産業省が2019年7月に公表したDXの自己診断ツールです。経営者や社内関係者が、自社のDX推進状況の現状と課題を共有し、次のアクションにつなげるための気付きを提供することを目的としています。

2026年4月3日からは「DX推進指標_自己診断フォーマット_2026改訂」が運用開始されています。デジタルガバナンス・コード3.0と整合する形で、設問および成熟度レベルが見直されました。

自己診断のやり方とキークエスチョン

自己診断は、IPA DX推進ポータルから自己診断フォーマット(Excel)をダウンロードし、35項目をレベル0〜5の6段階で評価する形式です。

9つのキークエスチョン(経営者が回答)と26のサブクエスチョン(経営幹部・事業部門・DX部門・IT部門が回答)から構成されます。情報システム部だけで回答せず、経営層・事業部門の議論を通じた合意形成が前提となります。

診断結果から導く次の一手

診断結果は、IPAのポータルに提出することでベンチマークレポートが取得できます。他社との比較、業界平均との比較が可能となり、自社の相対的なポジションを把握できます。

重要なのは、スコアの数値そのものではなく、項目ごとの「次のアクション」を言語化することです。診断フォーマットには項目別の「アクション欄」が用意されており、ここを記入する運用が、診断を「気付き」から「実行」に変える鍵となります。

経済産業省が選定する「DX事例(DX銘柄・DXセレクション)」

経済産業省が選定する「DX事例(DX銘柄・DXセレクション)」

本セクションでは、経産省が選定するDX事例の制度概要と、選定企業の共通点を整理します。

  • DX銘柄(上場企業)とDXセレクション(中堅・中小)の違い
  • 成功企業に共通する3つの特徴
  • 【具体例】DX銘柄・DXセレクション選定企業の取り組み事例

国から評価されている先行企業の取り組みを参考に、自社のDX推進を成功に導くエッセンスを学びましょう。 

DX銘柄(上場企業)とDXセレクション(中堅・中小)の違い

DX銘柄とDXセレクションは、対象企業層が異なります。DX銘柄は東京証券取引所上場企業を対象に、経済産業省・東京証券取引所・IPAが共同で選定する制度です。

DXセレクションは中堅・中小企業等を対象に、経済産業省が選定する制度で、2022年に開始されました。優良事例の選定・公表を通じて、地域内・業種内での横展開を図り、中堅・中小企業のDX推進を支援することが目的です。

成功企業に共通する3つの特徴

DX銘柄・DXセレクションに選定された企業の取り組みを分析すると、3つの共通する特徴が浮かび上がります。

経営層のコミットメントとアジャイルな推進体制

選定企業の特徴の第一は、経営層自身がDXにコミットし、推進体制をアジャイルに設計している点です。CEOやCDO(Chief Digital Officer)が直接関与し、意思決定スピードを確保しています。

アジャイルな推進体制とは、PoC・MVP単位での小さな検証を高速で回し、学びを次の意思決定に反映する仕組みです。年次計画に縛られず、半期・四半期単位で方針を見直す柔軟性が特徴となります。

レガシーシステム(技術的負債)からの計画的な脱却

第二の特徴は、レガシーシステム(技術的負債)からの計画的な脱却です。経済産業省「2025年の崖」レポートで指摘された旧システム保守への過剰な投資から脱し、攻めのIT投資へとリソースを振り向けています。

脱却の進め方は、いきなり全社一斉ではなく、優先度の高い領域から段階的にモダナイゼーションを進める方式が主流です。マイクロサービス化、SaaS活用、API連携の組み合わせで、既存資産を活かしながら刷新を進めます。

自社主導のDX推進体制の構築と段階的な内製化 

第三の特徴は、戦略・要件定義・主要設計の意思決定を社内で主導する体制を構築し、段階的に内製化を進めている点です。

選定企業に共通するのは「全面内製化」ではなく、コア領域(競争力の源泉となる事業システム・データ基盤)は社内主導+外部の伴走型支援、ノンコア領域(定型業務・バックオフィス系)は外注やSaaS活用でカバーするハイブリッド戦略です。

社内エンジニアの採用・育成と、外部パートナーからの技術移転を並行して進めることで、3〜5年かけて自社の技術基盤を強化していくアプローチが標準的な進め方となっています。

【具体例】DX銘柄・DXセレクション選定企業の取り組み事例

DX銘柄選定企業の代表例として、味の素が挙げられます。CDO(Chief Digital Officer)リーダーシップのもとDX推進委員会を設置し、全社データ基盤「ADAMS(Ajinomoto Data Management System)」を整備、DX銘柄に2022年・2023年・2025年と複数回選定されています。

DXセレクション2025のグランプリは、株式会社後藤組(山形県米沢市の総合建設業)が選定されました。「全員DX」をテーマにクラウドシステム、BIM/CIM、ICT施工、ペーパーレス化、AI・データ活用、社内IT人材育成を推進し、人時生産性向上と残業時間削減を実現した点が評価されています。

経済産業省のDX政策に関するよくある質問(FAQ)

発注者の方からよくいただく以下3つの質問にお答えします。

  • DX認定を取得していない企業がDX銘柄に選ばれることはありますか?
  • 経産省のDX政策は中小企業にも関係がありますか?
  • DX銘柄に選ばれるとどんなメリットがありますか?

制度の活用を検討する際につまずきやすい疑問について、わかりやすく回答します。 

DX認定を取得していない企業がDX銘柄に選ばれることはありますか?

DX銘柄に選定されるためには、DX認定の取得が前提条件となります。DX認定がデジタルガバナンス・コードの基本的事項を満たしている事業者を認定する制度であるのに対し、DX銘柄はその先の優良事例を選ぶ制度です。

つまり、DX認定はDX銘柄のエントリー要件であり、認定取得が選定の前段階となります。DX銘柄選定を目指す企業は、まずDX認定の取得から着手するのが標準的な進め方です。

経産省のDX政策は中小企業にも関係がありますか?

中堅・中小企業にも大いに関係があります。経済産業省は、中堅・中小企業向けの施策として、DXセレクション、中堅・中小企業等向けDX推進の手引き、地域DX推進ラボなどを整備しています。

DX認定制度も企業規模を問わず申請可能で、中小企業向けには金融支援措置(日本政策金融公庫の低利融資など)も整っています。

DX銘柄に選ばれるとどんなメリットがありますか

DX銘柄選定の主なメリットは、第一に投資家・取引先・採用候補者への対外的な評価向上です。「経産省・東証・IPAが共同選定するDX先行企業」というブランド価値は、株主対話・採用活動・取引拡大に活きます。

第二に、社内のDX推進活動への正当性付与です。経営層・現場のDX推進チームの取り組みが外部評価で裏付けられることで、社内予算確保や人材確保が進めやすくなります。第三に、選定企業同士のネットワーク形成です。受賞式・関連イベントを通じて、他社のDX担当者との情報交換が可能となります。

まとめ:経済産業省の指針を羅針盤に、伴走パートナーとDXを実現しよう

経済産業省のDX関連文書・制度は、自社のDX推進の羅針盤として活用できます。

発注者として最も重要なのは、デジタルガバナンス・コード3.0でDXの定義と全体像を理解すること、DX推進指標で自社の現在地を診断すること、DX認定・DX銘柄・DXセレクションの選定企業の取り組みから学ぶことの3点となります。

Incubation Baseは、新規事業開発・システム開発・DX支援の3軸で、シニアコンサルタントが戦略策定からPoC・MVP・本格展開まで伴走型で支援しています。デジタルガバナンス・コード3.0準拠やDX認定取得に向けたご相談は、無料の個別相談からお気軽にお問い合わせください。

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