企業が成長し競争力を維持するには、既存事業だけでは不十分です。ときには新しい事業を創出しなくてはならない場面もあります。しかし、新しい商品やサービス・ビジネスモデルは簡単に思いつくものではありません。
そこで、企画立案の際に役立つ新規事業アイデア事例を、成功事例から選んだ10例と、大手・中堅企業の社内新規事業をテーマ別にまとめた13例の、計23例ご紹介します。あわせて「新規事業開発とは」という根本的な意味や、企業成長をかなえる事業の考え方にも触れますので、ぜひ参考にしてください。
アイデアを事業化に進める方法を整理したい場合は、まだアイデアが固まっていなくてもご相談いただけます。
新規事業開発とは?新規事業におけるアイデアの重要性と役割

新規事業開発とは、企業がこれまでにない新たな製品・サービスやビジネスモデルを創出し、未開拓の市場へ進出する取り組みを指します。
新規事業は企業の成長と競争力を持続するうえで非常に重要な役割を果たします。自社をより成長させる優れた新規事業アイデア事例を生み出すためにも、まずは新規事業開発の役割と重要性をおさえておきましょう。
面白いビジネスアイデアの事例と発想方法は、下記の記事で紹介しています。

アイデアを事業計画に落とし込む際に使えるフレームワークは、下記の記事で紹介しています。

企業存続に不可欠な「第二の柱」の構築
既存事業の成長には限界があります。市場が飽和状態になれば利益拡大は困難になるため、新しい収入源の確保が欠かせません。既存事業が成熟期を迎えていても、新規事業開発とは何かを理解し「第二の柱」となる事業があれば、利益の減少や企業の衰退を避けられます。
アイデアを具体的に事業化するための立ち上げ手順は、下記の記事で解説しています。

変化の激しいビジネス環境への適応とリスク分散
現代のビジネスは技術進化やグローバル化により急速に変化しています。既存事業だけでは環境の変化に対応できない可能性もあるでしょう。常に変化する市場へ適応するためには、新たな機会を探る行動が必要です。
また、複数の事業を展開していれば、ひとつが不調に陥っても別の事業で収益を補えます。リスク分散の観点からも、新規事業アイデア事例を参考に事業の多角化を進めることは有効です。

事例をそのまま真似ても機能しないため、自社の強みと結びつける作業が要ります。アイデアの絞り込みからご相談いただけます。
新規事業・新規ビジネスのアイデア一覧10選:成功事例から学ぶヒント

新規事業・新規ビジネスのアイデア事例として、この章ではCraftBank、PROFFIT、BLEACH、SmartHR、メドレー(CLINICS)、ワークマン(WORKMAN Plus)、ダイハツ工業(らくぴた送迎)、富士フイルム(アスタリフト)、タニタ、SmartNewsの10例を取り上げます。大手・中堅企業の社内新規事業13例は、次の章でテーマ別に紹介します。一口に新規事業といっても、その成功の形はさまざまです。ここでは、「競合との差別化ポイント」や「既存アセットのユニークな活用」においてヒントとなる新規事業アイデア事例を厳選してご紹介します。これから事業を立ち上げる方は、以下の新規事業アイデア一覧を参考にしてください。
※他にもさまざまな優れたアイデアはあると思いますが、当社内で議論をする中で出た事例を一部ピックアップしています。
【新規事業アイデア一覧】
- CraftBank
- PROFFIT
- BLEACH
- SmartHR
- メドレー(CLINICS)
- ワークマン(WORKMAN Plus)
- ダイハツ工業(らくぴた送迎)
- 富士フイルム(アスタリフト)
- タニタ
- SmartNews
大手企業のビジネスアイデア成功事例と共通する特徴は、下記の記事で解説しています。

CraftBank
「CraftBank(クラフトバンク)」は、建設工事に従事する職人と工事依頼者をつなぐマッチングプラットフォームのひとつです。
CraftBankは建設業界の課題であるIT化に注目し、テクノロジーによって工事の受発注の利便性を向上させました。システムでは職人の評価を可視化しており、職人のスキルや受注実績をプロフィールで確認できます。
受発注の利便性を高めることで、既存サービスとの差別化を図りつつ、スキルに適した案件を適切な単価で請けられる環境を構築しました。
出典:CraftBank
PROFFIT
「PROFFIT」は自社の課題や予算に合ったコンサルタントをオンラインで選定できるサービスです。アドバイザーと依頼内容を絞ることで、データベースに登録されたコンサルタントから提案を集められます。
企業が自社の課題解決に適したコンサルタントを選定するのは非常に困難です。PROFFITはこの課題に着目し、コンサルタント探しと依頼における負担軽減を実現しました。コンサルタント側も営業に割く時間を削減し、本業に注力できます。
双方の課題に着目しそれを改善することで成功した好例です。
出典:PROFFIT
BLEACH
「株式会社BLEACH」は、マーケティングを一気通貫で支援する総合マーケティング事業をD2C業界に特化して提供している企業です。
自社データベースに登録されたマーケターや独自データベースを活用した、戦略アドバイスや施策を実施します。
株式会社BLEACHは、初期費用がかからず、売上を顧客とシェアする「レベニューシェア型」の報酬体系を取っています。そのため顧客はコンサルティング費用を事前に確保する必要がありません。予算が限られている企業でも依頼できます。
顧客が依頼しやすい環境を整えることで、同業他社との差別化に成功しつつ、依頼数を得ている事例といえます。
出典:株式会社BLEACH
SmartHR
「SmartHR」は入退社手続きや年末調整などの労務業務をデジタル化するSaaSです。アナログ業務の負担が多い領域に絞ってサービスを提供することで、バックオフィスの生産性課題を解決していきました。
企業側はバックオフィス作業の工数削減を、従業員側は入力・提出の負担軽減をと、利用者全体の業務負担軽減に成功しています。
課題が明確で頻度の高い業務に注目し、導入による効果を感じやすい設計にすることで、サービスの定着と拡大を実現しました。
出典:SmartHR
メドレー(CLINICS)
株式会社メドレーは、医療ヘルスケア領域の人材採用システムや、クラウド診療支援システム「CLINICS(クリニクス)」を提供する企業です。
同社の提供する「CLINICSオンライン診療」は、診察予約から事前の問診、ビデオ通話での診察、クレジットカードによるキャッシュレス決済までをワンストップで完結させるシステムです。
2015年8月に厚生労働省が遠隔診療に関する解釈を明確化する事務連絡を発出したことを背景に、メドレーは翌2016年2月から「CLINICSオンライン診療」の提供を開始しました。法規制や社会情勢(コロナ禍など)の変化に合わせてサービスをアップデートしながら、オンライン診療の普及に対応してきた事例です。
出典:株式会社メドレー
ワークマン(WORKMAN Plus)
ワークマンは、強みを活かした新業態「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」により、一般消費者向け市場の開拓に成功しました。
成功の鍵は「ターゲットの変更」と「見せ方の転換」です。過酷な環境に耐えるプロ向けの「高機能」かつ「低価格」な商品は、実はアウトドアやスポーツを好む一般ユーザーのニーズにも合致します。そこに目をつけ、商品はそのままに、店舗デザインや陳列方法をカジュアルに変更しました。
莫大なコストをかけて新商品を開発するのではなく、既存商品の価値を再定義し、ターゲットを変えることで「高機能ウェアの低価格帯」というブルーオーシャンを開拓した好例です。
出典:ワークマン
ダイハツ工業(らくぴた送迎)
自動車メーカーのダイハツ工業株式会社は、車を利用したさまざまなサービスを提供しています。そのひとつが、通所介護事業者向け送迎支援システム「らくぴた送迎」です。
通常、デイサービスなどの通所介護は施設スタッフがサービス利用者の送迎を行います。しかし、運行計画の作成が複雑で効率的に送迎するのが難しいという課題を抱えていました。
らくぴた送迎はこの課題を改善するために、以下のシステムを構築しています。
- 送迎前の半自動的な最適ルートの作成
- データ入力だけで簡易的に作成できる運行計画
これにより、施設スタッフの送迎で発生する負担を大きく軽減しました。自社の既存事業で得たノウハウを新しい形で活かし、成功させた好例です。
出典:ダイハツ工業株式会社
富士フイルム(アスタリフト)
富士フイルムは、写真フィルムやカメラ製造・医薬品事業など多方面で事業を展開しています。そのなかでもとくに注目を集めているのが、化粧品ブランドの「アスタリフト」です。
2007年に発売されたこのブランドは、写真フィルムで培ってきた技術を応用し、高品質な化粧品を開発・提供しています。現在でも他社にはない技術を活かした化粧品を発表し、多くの顧客から注目と支持を集めています。
ダイハツ工業株式会社同様、既存事業を活かした事例です。市場が縮小している事業(フィルム事業)の技術を別事業で活用し成功したという点では、非常に興味深い事例ともいえます。
タニタ
タニタは計測器メーカーとしての強みを生かしつつ、健康習慣を身近な形に落とし込む商品や施策を展開しています。その代表例が、社員食堂のヘルシーメニューを提供するレストラン「タニタ食堂」や、女性専用30分フィットネスジム「フィッツミー」の運営です。
単に健康を測る機器を売るだけでなく、食事や運動といった「続けられる体験」を提供することで、ブランドとの接点増加に成功した事例です。
プロダクトではなく習慣に起点を置いて価値を組み立てることで、顧客の共感と継続の両方を獲得できました。この事例からは、既存事業の起点を変えつつ顧客目線に立つことで、新規事業を創出するアイデアを学べます。
出典:株式会社タニタ
SmartNews
ニュースアプリである「SmartNews」は、生活者の習慣領域で情報を整理し直すことでユーザー基盤を構築しました。情報過多の時代を理解し、読む負担を減らしつつ必要な情報を届けることで成功した事例です。
ユーザーに適切な情報を提供することで広告などを含む収益モデルを成立させました。ユーザーの体験や使いやすさを優先したことで成功した事例ともいえます。
出典:SmartNews

テーマ別の新規事業アイデア例13選:大手・中堅企業の社内新規事業一覧
大手・中堅企業の社内新規事業から、新規事業アイデアの例を13例、テーマ別に紹介します。テーマは「DX・AI/IT」「既存アセット・技術の転用」「サブスク・サービス化」「社会課題・地域課題」の4つです。
ここでは、すでに本業を持つ企業が、自社の顧客・設備・技術・データを新しい事業につなげた例に絞りました。
事例の内容は、各社の公式発表・公式サイトで確かめられる範囲に限りました。「アイデアのヒント」は当社が読み取った発想の型で、各社の見解ではありません。
【テーマ別の新規事業アイデア一覧】
| 企業(サービス) | テーマ | アイデアの型 |
|---|---|---|
| ミスミ(meviy) | DX・AI/IT | 見積もりの手間をAIで短縮 |
| クボタ(KSAS) | DX・AI/IT | 農機が集めるデータを営農に活用 |
| 旭鉄工(i Smart Technologies) | DX・AI/IT | 社内のIoT改善の仕組みを外販 |
| ANAホールディングス(avatarin) | DX・AI/IT | 本業の価値を遠隔操作ロボットで届ける |
| セブン銀行(ATMサービス) | 既存アセット・技術の転用 | 店舗網を金融サービスの拠点に |
| JR東日本(STATION WORK) | 既存アセット・技術の転用 | 駅の空間を仕事場に転用 |
| KDDI(auでんき) | 既存アセット・技術の転用 | 通信の顧客基盤に電気を束ねる |
| 象印マホービン(みまもりほっとライン) | 既存アセット・技術の転用 | 家電を見守りの手段に転用 |
| メニコン(メルスプラン) | サブスク・サービス化 | レンズの販売を月額定額に |
| ダイキン工業(ZEAS Connect) | サブスク・サービス化 | 設備の初期費用を月額化 |
| ヤマト運輸(客貨混載) | 社会課題・地域課題 | 路線バスと宅配網を一本化 |
| セブン‐イレブン・ジャパン(セブンあんしんお届け便) | 社会課題・地域課題 | 店舗から顧客のもとへ出向く |
| ユニ・チャーム(RefF) | 社会課題・地域課題 | 使用済み製品を資源に戻す |
DX・AI/ITを活用した新規事業アイデア例
データやAI、ロボットといったデジタル技術を使い、本業の外側に新しいサービスを立ち上げた例です。
ミスミ(meviy)
ミスミの「meviy(メビー)」は、機械部品の3DデータをアップロードするだけでAIが自動で即時に見積もりを出し、最短1日で出荷する部品調達サービスです。2019年に本格展開しました。
アイデアのヒント:部品を発注するまでの「見積もり待ち」という手間を、データとAIで短くする発想です。顧客が自社との取引のどこで時間を取られているかを洗い出すと、同じ型のアイデアが見つかります。
出典:ミスミ(2026年5月13日のプレスリリース)/ミスミ(2024年9月のプレスリリース)
クボタ(KSAS)
クボタは2014年6月、農業機械とICTを組み合わせた営農・サービス支援システム「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」のサービスを始めました。食味・収量センサを搭載したコンバインと連動し、ほ場ごとの収量やタンパク含有率、水分率などの収穫データを記録できます。
アイデアのヒント:農機を売って終わりにせず、農機が集めるデータで生産者の営農を支える形です。自社製品が日々生み出すデータを、顧客の経営判断に使えないかと考える型です。
出典:株式会社クボタ(2014年5月21日のニュースリリース)
旭鉄工(i Smart Technologies)
エンジン部品やブレーキ部品などを製造する旭鉄工は、IoTを使って自社の生産ラインを遠隔モニタリングし、生産性を高めてきました。この技術を社外でも使えるようにするため、2016年9月に「i Smart Technologies」を設立しています。同社は、製造ラインの状況を後付けで見える化する「iXacs(アイザックス)」などを提供しています。
アイデアのヒント:社内の改善のために作った仕組みを、同じ悩みを持つほかの工場に売る発想です。自社で効果が出た社内ツールや業務ノウハウは、外販できる商品の候補になります。
出典:旭鉄工株式会社(2016年9月12日のお知らせ)/旭鉄工株式会社(組織・グループ)/i Smart Technologies株式会社
ANAホールディングス(avatarin)
avatarin(アバターイン)は、2020年4月にANAホールディングス発の初めてのスタートアップとして設立された会社です。同社のいう「アバター」は、社会課題を解決するために開発した遠隔操作ロボットを指します。ANAホールディングスは、同社の出資企業のひとつです。
アイデアのヒント:本業の価値(ここでは「移動」)を、遠隔操作という別の手段で届けられないかと考える発想です。社内発の事業を別会社として切り出し、出資する進め方も参考になります。
出典:avatarin株式会社(2022年1月28日のニュースリリース)/avatarin株式会社(会社概要)
既存アセット・技術を転用した新規事業アイデア例
店舗網や駅、顧客基盤、家電製品など、すでに持っている資産を別の用途に使った例です。
セブン銀行(ATMサービス)
セブン銀行(設立時の名称はアイワイバンク銀行)は、2001年4月に設立され、同年5月にATMサービスを始めました。2007年9月には、セブン‐イレブンとイトーヨーカドーの出店エリア(当時36都道府県)でATMの展開を終えました。
アイデアのヒント:小売の店舗網を、そのまま金融サービスの拠点として使った例です。自社が全国に持つ「場所」や「顧客との接点」に、別業種のサービスを載せられないかを考える型です。
JR東日本(STATION WORK)
JR東日本は2019年、駅ナカシェアオフィス事業「STATION WORK」を本格的に始めました。本格運用の前には、山手線の東京・新宿・品川の3駅に個室ブースを置いて実証実験を行いました。構想の出発点は、「エキナカに、安心して使える仕事場があれば」という現場での気づきだったと同社は紹介しています。
アイデアのヒント:人が毎日通る駅の空間と、移動の合間に生まれる「すき間時間」を結び付けた事業です。保有資産のうち使い切れていない部分を、顧客の困りごとと組み合わせる発想です。
KDDI(auでんき)
KDDIは2016年4月1日、電気サービス「auでんき」の提供を全国(沖縄県と一部離島を除く)で始めました。開始時には、auの携帯電話・スマートフォンとあわせて使うと、電気料金に応じて最大5%相当をキャッシュバックする「auでんきセット割」を用意しました。
アイデアのヒント:通信の契約者という既存の顧客基盤に、毎月支払う別の生活サービスを束ねた例です。自社の顧客がほかの会社に毎月払っているお金は何かを洗い出すと、同じ型のアイデアが見つかります。
出典:KDDI株式会社(2016年1月19日のニュースリリース)
象印マホービン(みまもりほっとライン)
象印マホービンは2001年3月、通信機器を組み込んだ電気ポット「i-POT」を使う「みまもりほっとライン」のサービスを始めました。電気ポットを毎日使うだけで、離れて暮らす家族が一人暮らしの高齢者の様子を把握できる安否確認サービスです。
アイデアのヒント:毎日使う家電を、見守りの「センサー」として使い直した例です。顧客が無意識に繰り返している行動に、別の価値を乗せられないかを考える型です。
出典:象印マホービン株式会社(あゆみ 2001年)/象印マホービン株式会社(みまもりほっとライン)
サブスク・サービス化による新規事業アイデア例
製品の売り切りから、月額で使い続けてもらう形に切り替えた例です。
メニコン(メルスプラン)
「メルスプラン」は、2001年にメニコンが始めた、月々の定額制でコンタクトレンズを使うサービスです。汚れやキズ、破損の際は新しいレンズに無料で交換し、度数が合わなくなったときの変更にも対応します。同社は、流通構造を大きく変えて月々定額制の仕組みを生み出したと説明しています。
アイデアのヒント:「レンズを売る」から「快適な視力を届け続ける」へ、売り物の単位を変えた例です。交換や保守までを月額に含めると、顧客との接点が購入時の1回から毎月に変わります。
ダイキン工業(ZEAS Connect)
ダイキン工業は2022年5月、店舗・オフィス向けのエアコン定額利用サービス「ZEAS Connect(ジアス コネクト)」を始めました。三井住友ファイナンス&リースなどと共同で開発したサブスクリプション型のサービスです。基本プランの月額料金に、機器費用や取付工事費用、修理サービス費用などを含めています。エアコンの新規導入や更新にかかる初期費用をなくすことを狙いとしています。
アイデアのヒント:設備の購入にともなう「初期費用」という顧客の負担を、月額制で取り除いた例です。
出典:ダイキン工業株式会社(2022年4月12日のプレスリリース)
社会課題・地域課題を解く新規事業アイデア例
買い物・物流・廃棄といった地域や社会の課題を、本業の延長で事業にした例です。
ヤマト運輸(客貨混載)
ヤマト運輸は2015年6月、岩手県北自動車と組み、岩手県で路線バスを使って宅急便を運ぶ「客貨混載」を始めました。路線バスの後部座席を荷台スペースにした車両で、乗客と荷物を一緒に運ぶ仕組みです。
アイデアのヒント:人を運ぶバスと荷物を運ぶトラックという、別々の輸送網を1本にまとめる発想です。自社と他社の「空いている枠」を重ねると、単独では成り立たない事業が見えてきます。
出典:ヤマト運輸株式会社(沿革)/ヤマトホールディングス株式会社(2015年6月3日のニュースリリース)
セブン‐イレブン・ジャパン(セブンあんしんお届け便)
「セブンあんしんお届け便」は、買い物が不便な地域に住む人や、外出が難しい高齢の人などに向けたセブン‐イレブンの移動販売サービスです。2011年5月に茨城県の店舗で始まりました。2023年11月の発表時点で、1都1道2府36県で118台が運行しています。
アイデアのヒント:店舗に来られない顧客のもとへ、店舗の側から出向く形にした例です。「来店」を前提にした自社のモデルで取りこぼしている顧客は誰かを考えると、新しい事業の対象が見えてきます。
出典:株式会社セブン‐イレブン・ジャパン(2023年11月1日のニュースリリース)
ユニ・チャーム(RefF)
ユニ・チャームは2015年、使用済み紙おむつの水平リサイクルプロジェクト「RefF(リーフ)」を始めました。鹿児島県志布志市と曽於郡大崎町と連携し、使用済み紙おむつを回収してリサイクルしています。同社によると、2025年には紙おむつの主要3素材であるパルプ・プラスチック・高分子吸水材のすべてのリサイクルに成功しました。2026年3月時点の累計リサイクル数は704万枚です。
アイデアのヒント:自社製品が使われた「後」に生まれる廃棄という社会課題を、事業の起点にしています。製品のライフサイクルを最後まで追いかけると、自治体など新しい連携先との事業が見えてきます。
出典:ユニ・チャーム株式会社(2026年6月8日のニュースリリース)
成功する新規事業アイデアの判断基準・ポイント

新規事業アイデアは、①競合他社にはない独創性・優位性があるか、②顧客の「不(課題)」を解決でき市場ニーズと合っているか、③持続可能な収益モデル(マネタイズ)を実現できるか、の3点で判断します。思いついたものを手あたり次第実践すればいいものではありません。事業に結びつくか、利益をきちんと出せるかを判断する必要があります。
アイデアを考案したら、以下の判断基準に従って事業に結びつくかチェックしましょう。
競合他社にはない「独創性・優位性」の有無
収益化が見込めそうなアイデアを思いついても、独創性がなければ他社の事業に埋もれてしまいます。自社にしかない強みとして活かせるかは、新規事業アイデアを判断するうえで重要なポイントです。
また、自社にはないアイデアや事業でも、すでに他社が展開していたというのも珍しくはありません。似た商品やサービスがある場合は、そこに自社だけの価値や優位性を付与できる要素はないか探す必要があります。
顧客の「不(課題)」解決と市場ニーズの合致度
新規事業成功のポイントのひとつが、顧客の課題を解消できるかという点です。アイデアを事業化するときは、自社の独自性や優位性だけでなく顧客の課題や悩みを解消し、価値を届けられるかもチェックしましょう。
顧客の課題解決やニーズを満たせない事業では、市場の支持を得られません。「誰かの役に立つ」「市場に必要とされる」商品やサービスであるかも、重要なポイントです。
課題を解消できるかは、机上では決めきれません。顧客へのインタビューや試作品で、課題と解決策が噛み合っているかを確かめる手順は、下記の記事で解説しています。

持続可能な「収益モデル(マネタイズ)」の実現性
顧客に求められる商品やサービスでも、収益モデルを実現できなければ新規事業を展開する目的を果たせません。事業化したときにどの程度収益を見込めるか、シビアにチェックしましょう。
ここで重要になるのが「市場規模(課題の大きさ)」です。ビジネスとして成功し収益化するためには、一定程度スケールする事業でなければなりません。解決しようとしている「不(課題)」が深く、対象となる市場が大きければ、それだけ収益化のチャンスも広がります。
単にマネタイズの仕組みがあるだけでなく、既存の市場を代替できるポテンシャルがあるかなど、事業の拡張性も考慮に入れましょう。これらを踏まえ、中長期的な収益計画を説明できるように準備することが大切です。
市場規模や収益性の見込みは、技術・法務・体制とあわせて、事業化するかどうかの判断にまとめます。その調査の進め方は、下記の記事で解説しています。

新規事業アイデア(ネタ)が思いつかない時の見つけ方・発想法・フレームワーク

新規事業アイデア(ネタ)が思いつかないときは、自社アセット(強み・弱み)の棚卸しと再定義、異業種の成功モデルを参考にする「タイムマシン経営」、既存事業への「付加価値(プラスワン)」の創出、の3つの発想法が役立ちます。新規事業アイデアは簡単に思いつくものではありません。事業として成立するためのアイデアを考えようとしてもうまくいかないこともあるでしょう。このような状態に陥った場合、以下の発想法やフレームワークが役立ちます。
アイデアが思いつかないときの参考にしてください。
自社アセット(強み・弱み)の棚卸しと再定義
アイデアが浮かばない時は、いきなり自社の強み(シーズ)から考えるのではなく、まずは身近な「不(不便・不満)」に目を向けてみましょう。
社内の人や自分自身が仕事や生活で感じている不便をヒアリングし、たった一人でも強烈に感じているニーズ(N=1のニーズ)を見つけ出します。そして、その「不の深さ(いくら払ってでも解決したいか)」と「人数(同じ悩みを持つ規模)」を掛け合わせ、事業として成り立つかを確認することも重要です。
解決すべき課題が明確になったら、それを解決する手段として自社アセットを棚卸し・再定義しましょう。自社の強みやリソースを組み合わせることで、実現可能なビジネスのヒントが得られます。分析の対象としては、以下のものがあります。
- 自社商品やサービス
- 自社従業員
- 既存事業のノウハウ
これらを分析し、発見した「不」を解消するために活かせる強みを探してみましょう。なお、外部環境や状況は常に変化しています。自社分析と再定義は定期的に実施してください。
異業種の成功モデルを参考にする「タイムマシン経営」
新規事業アイデアに活かせるのは、自社アセットだけではありません。他社の成功ビジネスモデルも活用できます。他社の既存ビジネスモデルを参考に、新規事業のアイデアを考えてみましょう。
海外ですでに流行しているビジネスや、国内の異業種で成功しているモデルも参考にできます。「なぜ成功したのか」を分析し、自社で再現できそうな部分を探してみましょう。
既存事業への「付加価値(プラスワン)」の創出
ビジネスは、人が目を向けないものから価値を見出すこともあります。既存企業の主要顧客層では見向きもしなかったものが、別の顧客層に支持されるというのも珍しくはありません。
自社やその周囲にあるものに目を向けてみましょう。既存事業に付加価値を与えることで、新規事業につながるかもしれません。
生成AIを起点にした新規事業の考え方と、実務で使えるプロンプト例は下記の記事で解説しています。

アイデアを「絵に描いた餅」にせず事業化する方法

アイデアを事業化するには、企画した商品やサービスを開発・実装するためのコストやリソースを理解し、プロトタイピングやMVPで試しながら企画を調整すること、必要に応じてアイデア創出から実装まで伴走できる外部パートナーを活用することが有効です。アイデアの事業化は簡単ではありません。事業化する前に頓挫する可能性もあります。新規事業を成功させるためにも、アイデアを事業化させる方法もあわせておさえておきましょう。
「企画」と「開発(実装)」の壁を理解する
アイデアが頓挫する原因のうちありがちなのが、コストやリソースに対する理解不足です。企画した商品やサービスを実際に提供するには、開発・実装にこぎつけるためのコストやリソースがきちんとあるかを理解する必要があります。
アイデアを考案したらすぐに実践するのではなく、プロトタイピングやMVP(実用最小限の製品)を作成しましょう。実際に動く商品やサービスを見ながら、企画の細かい部分を調整してください。
作り込まずに試す方法は一つではありません。LPで需要だけを測る型など、MVPの種類と開発手順は、下記の記事で解説しています。

アイデア創出から実装まで伴走できるパートナーを活用する
現実的なアイデアを思いつかない場合は、外部パートナーの手を借りるのも有効です。
自社の既存事業にまったく新しい付加価値を与えたい場合や、今までノウハウのなかった事業に着手する際は、プロの手を借りることも視野に入れましょう。
新規事業アイデアをスムーズに実装につなげるには、現実的なアイデアを創出する必要があります。外部パートナーを選出する際は、アイデア創出だけでなく実装まで伴走できる企業を選ぶのがポイントです。
【FAQ】新規事業開発やアイデア事例に関するよくある質問
- 新規事業開発とは簡単に言うと何ですか?
-
新規事業開発とは、企業が持続的に成長するために、既存事業とは異なる新しい製品やサービス、ビジネスモデルを生み出し、新たな市場を開拓する一連のプロセスのことです。
- 新規事業のアイデア事例を探す際のポイントは何ですか?
-
自社と似た規模やリソースを持つ企業の事例を探すだけでなく、異業種の新規事業アイデア事例から「課題解決の仕組み」や「ターゲットのずらし方」の共通点を見つけることがポイントです。
- 今回紹介された「新規事業アイデア一覧」を自社にどう活かせばいいですか?
-
そのまま表面的なビジネスモデルを真似るのではなく、事例の裏にある「なぜそのアイデアが生まれたのか」「どの自社アセットを活用したのか」という本質的な構造を分析し、自社の事業開発に落とし込んで活用してください。
新規事業アイデア事例から学び、自社ならではの価値を創出しよう
新規事業アイデアはただ考えているだけでは思いつきません。実際の成功事例を参考にしつつ、自社の価値を確認・創出しましょう。また、アイデア創出の際は実際に事業化できるかにも注目しながら検討してください。
Incubation Baseでは「アイデアはあるが、どう事業化すればよいかわからない」という方に向けて、構想段階からの伴走支援を提供しています。