フィージビリティスタディ(F/S)とは?意味やPoCとの違い、進め方を解説

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フィージビリティスタディ(F/S)とは?意味やPoCとの違い、進め方を解説

フィージビリティスタディ(F/S)とは、新規事業や投資案件の実現可能性を多面的に評価する調査活動です。本記事は、新規事業を担当する経営企画・事業開発責任者の方に向けて、F/Sの意味とPoCとの違い、5つの評価項目と進め方を解説します。

この記事でわかること
  • フィージビリティスタディの意味と事業計画書・PoCとの違い
  • F/Sのメリットと実務上のデメリット
  • 5つの評価項目(技術・経済・運用・法務・スケジュール)の進め方
  • F/S完了後のGo/No-Go・ピボット・PoC移行の判断フレームワーク

読了後には、自社の新規事業案件にF/Sを適切なタイミングで実施できる状態を目指します。

目次

フィージビリティスタディ(F/S)とは?

フィージビリティスタディ(F/S)とは?

まずはF/Sが持つ本来の役割と、事業計画書やPoCといった他のプロセスとの明確な違いについて解説します。 

  • 意味と役割
  • 事業計画書との関係
  • PoC(概念実証)との違い

意味と役割

フィージビリティスタディ(Feasibility Study、略称F/S)は、新規事業や投資案件が「実現可能か」「事業として成立するか」を多面的に評価する調査活動です。日本語では「実現可能性調査」と訳されます。

F/Sの役割は、本格的な投資判断の前に、技術・経済・運用・法務・スケジュールの観点から事業の成立可能性を検証することです。リスクを先に洗い出すことで、後工程の手戻りや投資損失を抑えます。

事業計画書との関係

事業計画書は、事業の実行計画を文書化したものです。F/Sは事業計画書を作成する前段階、または並行して実施される調査活動と位置づけられます。

実務上は、F/Sの結果を踏まえて事業計画書を精緻化する流れが一般的です。F/Sを飛ばして事業計画書を作成すると、検証されていない前提を多く含む計画となり、社内承認後に実行段階で頓挫するリスクがあります。

PoC(概念実証)との違い

PoC(Proof of Concept)は、特定の技術や仕組みが「動くこと」を検証する活動で、F/Sよりも狭く深い検証となります。F/Sが事業全体の実現可能性を多面的に見るのに対し、PoCは特定要素の動作確認に焦点を当てます。

順序としては、F/Sで事業全体の方向性を確認した後、特に検証が必要な技術要素についてPoCを実施するのが一般的です。F/SとPoCは補完関係にあります。

フィージビリティスタディのメリットとデメリット

フィージビリティスタディのメリットとデメリット

本セクションでは、F/S実施のメリットと実務上のデメリットを整理します。

主なメリット

F/Sの主なメリットは、第一に投資リスクの早期発見です。本格投資の前に重大なリスクを洗い出せれば、撤退・ピボットの判断を低コストで行えます。

第二に、社内承認の精度向上です。F/Sの結果を添えた事業計画書は、根拠が明確なため経営層の意思決定を支えます。第三に、関係者との目線合わせです。F/Sを通じて関係部門の認識ギャップを早期に解消できます。

実務上のデメリット

デメリットの第一は、机上分析に偏り、 実証データを欠いた判断になるリスクです。 F/Sは文献調査・ヒアリング・財務シミュレーション等の 机上分析が中心となるため、「調査上は成立する」と 判断した事業が、実際に動かしてみると想定通りに 機能しないケースが起こり得ます。 特に技術的妥当性の評価は、机上での検討だけでは 精度に限界があります。F/Sの結論にPoCでの実証データを 組み合わせることで、判断精度を高めるアプローチが 実務上は推奨されます。

第二は、調査範囲の肥大化による分析麻痺 (Analysis Paralysis)のリスクです。 5つの評価項目を網羅的に調査しようとするあまり、 調査範囲が際限なく広がり、意思決定が先送りされる パターンです。大手企業では社内の関係部門が多く、 各部門の要望を取り込むうちに調査スコープが 当初計画の2〜3倍に膨張することも珍しくありません。 対策は、F/S企画段階で「調査対象外」を明確に定義し、 期間上限(原則6か月以内)を経営層と合意しておくことです。

第三は、調査結果の陳腐化リスクです。 F/Sに6か月以上を費やすと、調査開始時点の 市場環境・競合状況・技術動向が変化し、 調査結果自体の前提が崩れる可能性があります。 変化の速い領域では、F/Sの精度を上げることよりも、 一定の精度で早期に判断しPoCで実証に進む方が、 結果的に事業成功の確率を高めます。

フィージビリティスタディの具体的な進め方

フィージビリティスタディの具体的な進め方

ここからは、F/Sを実りあるものにするための具体的な調査手順を4つのステップに分けて解説します。 

  • 調査目的と前提条件の明確化
  • 情報収集と各項目の分析・評価(5つの評価項目)
  • 代替案(プランB)の検討とリスク対策
  • 総合評価と事業化の可否判断(レポート作成)

調査を効率的かつ網羅的に進め、精度の高い意思決定に繋げるための実務的なプロセスを押さえましょう。 

調査目的と前提条件の明確化

F/Sの起点は、調査目的・対象範囲・前提条件の明確化です。何を判断するためのF/Sか、どこまでの範囲を検証するか、どんな前提を置くかを企画段階で言語化します。

目的が曖昧なまま情報収集を始めると、調査が拡散して期間・費用が膨張します。F/Sの初動で時間をかけても、目的設定の精緻化に投資する価値があります。

情報収集と各項目の分析・評価(5つの評価項目)

情報収集と評価は、5つの観点で多面的に進めます。それぞれの評価項目は独立しておらず、相互に影響します。

技術的妥当性

技術的妥当性は、想定する技術が現在の技術水準で実現可能かを評価する観点です。具体的には、必要な技術の成熟度、自社・委託先の技術ケイパビリティ、技術リスクの所在などを検討します。

想定技術の検証が深く必要な場合は、F/Sの結論として「PoC実施」を提言する流れが一般的です。

経済性・財務的妥当性

経済性・財務的妥当性は、事業の収益性と投資回収可能性を評価する観点です。具体的には、初期投資、運用コスト、収益予測、投資回収期間(IRR・NPV)などを試算します。

想定の精度を上げるためには、複数のシナリオ(楽観・中立・悲観)で試算し、感度分析を行うのが標準的な進め方となります。

運用・組織的妥当性

運用・組織的妥当性は、事業を運営する組織体制と業務プロセスが成立するかを評価する観点です。必要人員のスキル、社内体制、外部パートナー、業務プロセスの実現可能性を検証します。

技術と財務だけ揃っていても、運営体制が組めなければ事業は動きません。組織的妥当性は、見落とされやすい論点として意識的に評価する必要があります。

法務的妥当性

法務的妥当性は、関連法規制への適合性を評価する観点です。業界規制、データ保護、知財、契約、許認可などの観点で検証します。

新規事業はしばしば既存規制の想定外の領域に踏み込むため、法務的論点は早期に洗い出します。場合によっては、規制当局への事前確認や規制サンドボックス制度の活用も視野に入れます。

スケジュール妥当性

スケジュール妥当性は、企画から事業立ち上げまでの工程と期間が現実的かを評価する観点です。各工程の所要期間、依存関係、クリティカルパス、市場機会との整合性を確認します。

市場機会との整合性は特に重要です。技術・財務・運用・法務の4項目が成立しても、市場機会が閉じる時期に立ち上がる事業では成果が出ません。

代替案(プランB)の検討とリスク対策

F/Sでは、想定通りに進まない場合の代替案(プランB)の検討が原則です。代替案を持たないF/Sは、Yes/Noの二択判断しか提供できず、意思決定の柔軟性を狭めます。

代替案は、ターゲット顧客の変更、提供価値の絞り込み、提携先の見直し、規模・期間の調整など、複数の軸で検討しておきます。リスク発生時の対応シナリオも併せて整理します。

総合評価と事業化の可否判断(レポート作成)

5つの評価項目の結果を統合し、事業化の可否について総合評価を行います。各項目の評価をスコアリングし、判断基準(事前に定めた合格ライン)と照合する形で結論を導きます。

レポートは、結論・根拠・代替案・推奨アクションの構造で作成します。経営層が短時間で理解・判断できるエグゼクティブサマリーの整備が、F/Sの実用性を高めます。

F/S完了後の意思決定フレームワーク

F/S完了後の意思決定フレームワーク

本セクションでは、F/S完了後の判断軸と次工程への移行条件を整理します。

  • Go/No-Go/ピボットの判断基準
  • F/SからPoCへの移行条件

 Go/No-Go/ピボットの判断基準

F/S結果を踏まえた判断は、Go(事業化推進)、No-Go(撤退)、Pivot(仮説変更)の3択が基本です。Go/No-Goの二択ではなく、Pivotという第3の選択肢を持つことが、意思決定の質を高めます。

判断基準は、F/Sの企画段階で経営層と合意します。「5項目とも合格ラインを超えればGo」「2項目以上で重大リスク発見ならNo-Go」「1項目で重大リスク発見ならPivot検討」など、定量的な基準を設定します。

F/SからPoCへの移行条件

PoCへの移行は、F/S結果でGo判定が出て、かつ「特定の技術要素について追加検証が必要」と判断された場合に実施します。事業全体は実現可能と評価されているが、技術リスクの定量化が必要な状態です。

PoCへ移行する際は、検証目的・成功基準・期間・予算を事前に明確化することが原則です。F/SとPoCで論点が混在しないよう、それぞれの役割を分けて運営します。

フィージビリティスタディに関するよくある質問(FAQ)

発注者の方からよくいただく以下3つの質問にお答えします。

  • フィージビリティスタディを行うべきタイミングはいつですか?
  • 調査にはどのくらいの期間をかけるべきですか?
  • F/Sと事業計画書の作成はどちらを先に行うべきですか?
フィージビリティスタディを行うべきタイミングはいつですか?

事業アイデアが概ね固まり、本格的な投資判断の前段階で実施するのが基本です。アイデア段階では仮説検証(CPF・PSF)を優先し、その仮説に一定の根拠が出てきた段階でF/Sを行う流れが現実的です。

投資規模が一定以上(社内基準額以上)の案件では、F/Sを必須プロセスとして位置づけることを推奨します。

調査にはどのくらいの期間をかけるべきですか?

案件規模により異なりますが、一般的には2〜6か月、費用規模は数百万〜数千万円が目安です。投資規模が大きい案件ほど、F/Sにかける期間と費用も大きくなる傾向があります。

ただし、6か月を超えるF/Sは「調査が目的化している」リスクがあります。期間を区切り、その範囲内で意思決定可能なレベルまで情報を整理する規律が必要です。

F/Sと事業計画書の作成はどちらを先に行うべきですか?

原則としてF/Sを先に行い、その結果を踏まえて事業計画書を精緻化する順序が推奨されます。事業計画書だけ先に作成すると、検証されていない前提を含む計画となります。

実務上は、簡易版の事業計画ドラフトを作成してからF/Sに進む流れもあります。重要なのは「事業計画の前提がF/Sで検証されている」という構造を確保することです。

まとめ:フィージビリティスタディで新規事業の「確からしさ」を検証しよう

F/Sは、本格投資の前に事業の実現可能性を多面的に検証するプロセスです。事業開発をリードする立場としてとくに意識すべき点は、事前の目的明確化、5つの観点での網羅的な評価、そしてGo/No-Go/Pivotの判断基準の事前合意です。 

Incubation Baseは、新規事業開発・システム開発・DX支援の3軸で、シニアコンサルタントが事業仮説検証から実装まで伴走型で支援しています。F/Sの設計や評価項目の分析でお悩みの方は、無料の個別相談からお気軽にお問い合わせください。

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