新規事業の立ち上げを成功させる鍵は、優れたアイデアよりも「誰をメンバーに選ぶか」にあります。適切な人材を揃えられなければ、どれだけ魅力的なビジネスプランがあっても、プロジェクトは軌道に乗りません。
本記事では、新規事業の立ち上げメンバーの選び方について、必要な役割から選定基準、外部パートナーの活用方法まで、実践的な視点で解説します。
- 新規事業立ち上げに必要な4つの役割とそれぞれの責任範囲
- メンバー構築における実務的なよくある質問への回答
- メンバー選定で重視すべき適性と共通点
- 社内リソースが不足している場合の外部パートナー活用法
- 自社にリソースがない場合の具体的な立ち上げ手順
新規事業では、既存事業で求められるスキルセットとは異なる能力が必要です。不確実性の高い環境で成果を出せる人材を見極め、社内だけで揃わない場合は外部パートナーとの協業も視野に入れましょう。本記事を通じて、自社の状況に応じたチーム構築の方法が理解できます。
新規事業開発とは?立ち上げメンバーが事業の成否を分ける理由

新規事業開発とは、既存の事業領域とは異なる新しい製品やサービスを創出し、収益化を目指す取り組みです。企業の成長戦略において重要な位置を占め、市場環境の変化に対応するための手段として多くの企業が注力しています。
新規事業開発では、立ち上げメンバーの質が事業の成否を大きく左右します。既存事業と異なり、新規事業には確立された市場や顧客基盤が存在せず、不確実性が高い環境での意思決定が求められるためです。このような状況下では、メンバー一人ひとりの能力や姿勢が、事業の方向性や成果に直接的な影響を与えます。

立ち上げメンバーが事業の方向性を大きく左右する具体的な理由は以下の通りです。
初期段階での意思決定の質が事業の方向性を決める
新規事業の初期段階では、限られた情報の中で重要な判断を下す場面が頻繁に発生します。根幹的な意思決定である、「誰をターゲットとするか」「どのような価値を提供するか」「どのように収益化するか」といった点が、メンバーの経験や視点に大きく依存するためです。
適切なメンバーが揃っていれば、市場の変化を敏感に捉え、柔軟に方向転換できますが、不適切なメンバーでは判断ミスが重なり、事業が行き詰まる可能性が高まります。
少数精鋭での運営が求められるため、一人ひとりの影響力が大きい
新規事業は通常、限られた予算と人員でスタートします。そのため、メンバー一人ひとりが複数の役割を担い、高い成果を出すことが期待されます。既存事業のように分業が進んでいない環境では、個々のパフォーマンスが事業全体の進捗に直結するため、メンバーの選定がより重要です。
チームの相性と文化が組織の推進力を生む
新規事業では、試行錯誤を繰り返しながら正解を探していくプロセスが不可欠です。このプロセスを効果的に進めるには、メンバー間の信頼関係やコミュニケーションの質が重要になります。互いの強みを理解し、建設的な議論ができるチームであれば、困難な状況でも前進し続けられますが、相性が悪いと内部の摩擦が生じ、事業推進の妨げとなるでしょう。
新規事業の立ち上げメンバーは、単なる「実行部隊」ではなく、事業の方向性を定め、価値を創造する「事業の核」です。そのため、メンバー選定には十分な時間と注意を払う必要があります。
新規事業立ち上げメンバーに不可欠な4つの役割

新規事業を成功させるためには、明確な役割分担と責任範囲の設定が欠かせません。とくに重要な機能を果たす4つの役割について解説します。
プロダクトマネージャー:製品・サービスの責任者
プロダクトマネージャー(PM)は、製品やサービスの方向性を定め、開発の優先順位を決定する責任者です。顧客のニーズと事業の実現可能性のバランスを取りながら、「何を作るべきか」を判断します。
PMの主な責務
- 市場調査やユーザーインタビューを通じて顧客の課題を深く理解する
- 課題を解決する製品・サービスのコンセプトを設計する
- 開発チームと密接に連携し、機能の優先順位付けや仕様の調整を行う
新規事業では、限られたリソースの中で最大の価値を生み出す必要があるため、PMの判断力が事業の成否に直結します。
PMには、ユーザーの声に耳を傾けるだけでなく、ビジネスモデルや収益性も考慮した上で、実現すべき製品像を明確に描くことが求められます。また、エンジニアやデザイナーとの協働において、技術的な制約を理解しながら、適した解決策を導き出すコミュニケーション能力も必要です。
ビジネスデベロップメント:収益化と顧客開拓の責任者
ビジネスデベロップメント(BD)担当者は、事業の収益化戦略を設計し、顧客開拓や販路構築を推進する責任者です。優れた製品があっても、それを適切に市場に届け、収益を生み出せなければ事業は成立しません。BDは、この「売れる仕組み」を作る役割を担います。
BDの主な業務
- ターゲット顧客の特定
- 販売戦略の立案
- パートナーシップの構築
- 価格設定
- 初期顧客の獲得
新規事業では、既存の販売チャネルが使えない場合も多く、ゼロから顧客との接点を作り出す必要があります。そのため、BDには高い営業力と交渉力、そして新しい市場を開拓する開拓精神が求められます。
また、BDは市場からのフィードバックを製品開発にフィードバックする役割も担います。顧客との対話を通じて得られた洞察を社内に共有し、製品改善や事業戦略の調整に活かすことで、市場との適合性(プロダクトマーケットフィット、PMF)の実現に貢献します。
エンジニア・デザイナー:具現化の責任者

エンジニアとデザイナーは、アイデアを実際の製品やサービスとして形にする責任者です。新規事業では、コンセプトを素早く検証し、市場の反応を見ながら改善を重ねるアジャイルな開発が求められるため、技術力だけでなく、柔軟性と速度も重要になります。
エンジニアの役割
- 技術的な実現可能性を判断し、システムやプロダクトを構築する
- 最小限の機能で市場検証を行うMVP(Minimum Viable Product、実用最小限の製品)を開発する
- 技術的な制約や課題を早期に特定し、PMやBDと協力して現実的な解決策を見出す
新規事業では、完成度よりもスピードが優先される場面が多いため、MVPの開発能力がとくに重要です。
デザイナーの役割
- ユーザー体験(UX)を設計し、視覚的にも機能的にも優れたインターフェースを提供する
- ユーザー調査の結果を基に、顧客の課題を解決する体験を設計する
- プロトタイプを通じて検証を繰り返す
新規事業では、ユーザーが直感的に理解でき、使いやすい製品であることが、初期の顧客獲得において極めて重要です。
両者に共通して求められるのは、「不確実性の中で価値を生み出す力」です。仕様が固まっていない段階から開発に取り組み、顧客の反応を見ながら柔軟に改善を重ねる姿勢が不可欠です。
責任者(オーナー):予算確保と社内調整の責任者
新規事業の責任者(オーナー)は、事業全体の方向性に最終的な責任を持ち、予算確保や社内調整を行う役割です。経営層との橋渡し役として、事業の進捗を報告し、必要なリソースを獲得する交渉力が求められます。
責任者の主な役割
- 事業戦略の策定
- 経営層への報告と承認の取得
- 予算やリソースの確保
- チーム全体のマネジメント
新規事業は既存事業と異なり、短期的な収益が見込めないことが多いため、経営層からの理解と継続的な支援が欠かせません。責任者は、事業の進捗や成果を適切に伝え、組織全体の支持を得る役割を担います。
また、責任者は社内の障壁を取り除き、チームが事業開発に集中できる環境を整えることが求められます。既存事業との調整、法務や財務などのサポート部門との連携、人材の確保など、チームが直面する課題を解決し、事業推進を加速させることもまた期待されています。
このように、責任者には、事業に対する強いコミットメントと、組織内での影響力を持ち合わせていることが必要です。新規事業の不確実性を理解した上で、チームを信頼し、適切な権限委譲を行いつつ、重要な局面では自ら意思決定を下す判断力が求められます。
新部署の立ち上げメンバーを選定する際の基準と適性

新規事業の立ち上げメンバーを選定する際には、既存事業で成果を上げている人材とは異なる視点での評価が必要です。不確実性の高い環境で成果を出せる人材を見極めるためには、スキルだけでなく志向性や行動特性も重視する必要があります。
新規事業に向いている人の共通点
新規事業で成果を上げる人材には、いくつかの共通した特性があります。これらの特性を持つ人材を選定することで、事業成功の確率を高められます。
正解がない状況で自ら判断し行動できる
新規事業では、過去の成功事例や既存のマニュアルが存在しません。自ら情報を集め、仮説を立て、実行し、結果から学ぶサイクルを回せる人材が求められます。指示待ちではなく、曖昧な状況でも主体的に判断し、失敗を恐れず行動できる人が向いています。
顧客のフィードバックを素直に受け入れられる
新規事業では顧客の声に耳を傾け、柔軟に方向修正する姿勢が欠かせません。自分のアイデアや仮説に固執せず、市場の反応を基に冷静に判断できる人材が向いています。否定的なフィードバックを建設的に捉え、改善に活かせる柔軟性が重要です。
不確実性や曖昧さに対する耐性が高い
新規事業では、明確な目標やKPI(重要業績評価指標)が定まっていない段階から活動をスタートすることが一般的です。そのため、不安定な状況でもストレスを感じにくく、むしろその環境を楽しめる人材が適しています。安定した環境を好む人材は、新規事業の不確実性に苦痛を感じるかもしれません。
学習意欲が高く、新しい知識を吸収できる
新規事業では、未知の市場や技術に取り組むことが多く、常に新しい知識やスキルの習得が求められます。自己学習能力が高い人材は、変化の激しい環境でも成果を出せます。
チームでの協働を重視できる
新規事業は少数精鋭のチームで進めることが多く、メンバー間の協力が不可欠です。自分の専門領域だけでなく、他のメンバーの役割も理解し、サポートし合える姿勢が求められます。エゴを抑え、チーム全体の成功を優先できる人材が新規事業には向いています。
社内メンバー選定で注意すべきポイント
社内から新規事業のメンバーを選定する際にはいくつかの注意点があります。これらを理解せずに選定を進めると、期待した成果が得られないリスクが生じます。
既存事業との兼務の割合によりリソースが割けないことがある
多くの企業では、新規事業メンバーが既存事業と兼務する形でスタートします。しかし、兼務の割合が高すぎると、新規事業に十分な時間とエネルギーを割けず、中途半端な結果に終わる可能性があります。
新規事業は既存事業以上に集中と没頭が必要なため、メンバーの稼働率を明確にし、最低でも50%以上、理想的には80%以上のリソースを確保することが望ましいです。また、既存事業の繁忙期と新規事業の重要な局面が重なる可能性も考慮し、計画を立てる必要があります。
既存事業でのやり手が必ずしも適任とは限らない
既存事業で高い成果を上げている人材が、新規事業でも同様に成功するとは限りません。既存事業で求められる能力は、確立されたプロセスやリソースを効率的に活用する力であり、新規事業で求められる「ゼロから価値を創造する力」とは異なります。
既存事業の成功者は、明確な目標と豊富なリソースがある環境に最適化されている場合が多く、不確実性の高い新規事業では本来の力を発揮できないこともあります。過去の実績だけでなく、新規事業に必要な志向性や適性を見極めることが重要です。
スキルセット以上に志向性を重視することが大切
新規事業では、特定のスキルや経験よりも、「不確実性を楽しめるか」「失敗から学べるか」といった志向性や価値観が成果に大きく影響します。スキルは後から習得できますが、根本的な志向性を変えることは困難です。
そのため、選定時には、候補者が過去にどのような状況で力を発揮したか、どのような環境でモチベーションが高まるかを深く理解することが必要です。具体的には、過去に不確実な状況でどのように行動したか、予期せぬ問題にどう対処したかといった行動事例を確認すると良いでしょう。
社内メンバー選定では、本人の意思も極めて重要です。新規事業への参加が強制的であったり、キャリア上の通過点として捉えられたりすると、十分なコミットメントが得られません。新規事業に対する情熱と覚悟を持った人材を選ぶことが重要です。
立ち上げメンバー不足を外部パートナーで補う際のポイント

社内に適切なメンバーが揃わない場合、外部パートナーとの協業も有効です。ただし、パートナー選定を誤ると、期待した成果が得られないだけでなく、事業の方向性が歪む可能性もあります。外部パートナーを活用する際には、以下の点に注意が必要です。
単なる受託会社ではなく「伴走型」のパートナーを選ぶ
新規事業において外部パートナーを活用する場合、単に指示された作業をこなすだけの受託会社ではなく、事業の成功に向けて共に考え、行動する「伴走型」のパートナーを選ぶことが重要です。
伴走型パートナーは、開発やマーケティングといった個別の機能提供にとどまらず、以下のような幅広い領域で価値を提供します。
- 事業戦略の立案段階からの参画
- 市場分析と顧客インサイトの提供
- 仮説検証の設計と実行支援
- ピボット(方向転換)の判断サポート
伴走型パートナーを見極めるには、以下のポイントを確認しましょう。
- 初回の打ち合わせでの質問の深さ
単に要件を聞くだけでなく、事業の背景や目的、ターゲット市場について深く質問してくるか - 過去の実績の質
単なる制作物ではなく、事業の成長や成功事例を具体的に示せるか - 契約形態の柔軟性
固定の納品型ではなく、柔軟な契約や成果連動型の報酬体系を提案できるか
受託型と伴走型の最大の違いは、「何を成果とするか」の定義です。受託型は「仕様通りの納品」が成果ですが、伴走型は「事業の市場適合」や「顧客の獲得」が成果となります。新規事業では後者の視点が不可欠です。
指示待ちではない「共創型」のパートナーを選ぶ
新規事業では、事業の方向性や施策の詳細が最初から明確になっていることはまれです。そのため、指示を待つのではなく、自ら提案し、共に事業を創り上げる「共創型」のパートナーが理想的です。
共創型パートナーは、クライアントの課題を深く理解した上で、自らの専門知識や経験を基に積極的に提案を行います。
- 「この機能を作ってほしい」という依頼に対し、顧客課題の解決可能性を検証する方法を提案
- より効果的な代替案を複数提示
- 当初の想定を超える価値提供を模索
共創型パートナーを見極めるためのチェックポイントは以下の通りです。
- 提案の幅と深さ
複数の選択肢とそれぞれのメリット・デメリットを示せるか。単一の解決策しか提示できないパートナーは、思考の柔軟性に欠ける可能性がある - 過去の方向転換経験
当初の計画から方向転換した事例や、クライアントの想定を超える提案をした経験があるか - コミュニケーションスタイル
定期的な報告だけでなく、疑問点や懸念事項を積極的に共有し、対話を通じて最適解を探ろうとする姿勢があるか
共創型のパートナーシップでは、「発注者と受注者」という関係ではなく、「チームメンバー」としての協働が実現します。
外部パートナーの活用は、社内リソースの制約を補うだけでなく、外部の視点や専門知識を取り入れることで事業の質を高める機会でもあります。伴走型・共創型のパートナーを選ぶことで、新規事業の成功確率を大きく向上させることが可能です。
自社にリソースがない場合の新規事業立ち上げ手順

社内に十分なリソースがない状況でも、新規事業の立ち上げは可能です。以下の手順に従って、限られたリソースを戦略的に配分し、段階的に事業を成長させましょう。
コアメンバーの選定
新規事業の立ち上げにおいては、まずコアメンバーの選定を行いましょう。リソースが限られている場合でも、最低限の意思決定者と実行責任者は社内で確保する必要があります。
コアメンバーとして必要なのは、事業の方向性を決定する責任者と、実務を推進するプロダクトマネージャーまたはビジネスデベロップメント担当者です。この2名が確保できれば、他の機能は外部パートナーで補うことが可能です。責任者は経営層との調整や予算確保、PMまたはBDは顧客理解と事業の具体化を担います。
コアメンバー選定では、「新規事業に専念できる時間」を明確にすることが重要です。兼務の場合でも、週の稼働時間の60%以上を新規事業に割ける人材を選びましょう。後の事業展開をスムーズに進めるために、この段階では少数精鋭を重視し、質の高いメンバーを厳選することが重要です。
また、コアメンバーには事業に対する強い当事者意識が求められます。外部パートナーを活用する場合でも、最終的な意思決定と責任は社内のコアメンバーが担うため、事業への深いコミットメントが不可欠です。
パートナーの選定
コアメンバーが決まったら、不足している機能を補う外部パートナーを選定します。パートナー選定では、前述した「伴走型」「共創型」の視点に加え、自社のコアメンバーとの相性も重要です。
パートナー選定のプロセスでは、複数の候補と面談し、事業のビジョンや課題を共有した上で、それぞれの提案内容を比較することが有効です。この際、単なる提案書の内容だけでなく、対話の質やコミュニケーションのスムーズさも評価基準に含めましょう。新規事業では頻繁なコミュニケーションが必要となるため、ストレスなく対話できる相手を選ぶことが重要です。
また、パートナーとの契約では、柔軟性を確保することが大切です。新規事業は方向転換が頻繁に発生するため、固定的な契約ではなく、段階的に範囲を見直せる契約形態が望ましいです。たとえば、「最初は3か月間の短期契約でスタートし、双方の相性や成果を確認した上で継続を判断する」などの方法が有効です。
パートナー選定では、実績だけでなく「学習能力」も重視しましょう。新規事業では予測できない課題が次々と現れるため、新しい状況に柔軟に対応し、学習できる能力が不可欠です。
仮説検証(PoC)
コアメンバーとパートナーが揃ったら、本格的な開発や投資を行う前に、事業の仮説検証(PoC)をするフェーズに入ります。PoCとは「Proof of Concept」の略で、アイデアが実現可能で市場に受け入れられるかを小規模に検証するプロセスです。
PoCの目的は、「顧客が実際に課題を感じているか」「提供する解決策に価値を感じるか」「対価を支払う意思があるか」を確認することです。この段階では、完成度の高い製品を作る必要はなく、最小限の機能で仮説を検証できるMVP(実用最小限の製品)を開発します。
効果的なPoCの進め方は以下の通りです。
- 仮説の明確化
検証したい仮説を具体的に定義します。たとえば、「中小企業の経理担当者は、請求書処理の自動化に月額5,000円を支払う意思がある」といった仮説を立てます。 - 最小限のプロトタイプ作成
仮説を検証できる最小限のプロトタイプやサービスを用意します。ここでの目的は「完成度の高い製品を作ること」ではなく、「顧客はお金を払ってでもその課題を解決したいか」を確認すること(学習)です。 - データとインサイトの収集
定量的なデータと定性的なインサイトの両方を収集することが重要です。- 定量データ: 何人がサービスに興味を示したか、何人が実際に利用したか
- 定性データ: 顧客がどのような言葉で反応したか、どの機能に最も価値を感じたか
PoCの期間は通常1〜3か月程度が目安です。この期間内に、仮説が正しいかどうかの判断材料を集め、次のステップ(本格開発または方向転換)を決定します。
組織の拡大
PoCを通じて事業の可能性が確認できたら、組織を拡大し、本格的な事業展開に移行します。この段階では、外部パートナーに依存していた機能を徐々に内製化したり、専門人材を追加採用したりして、事業の推進力を高めます。
組織拡大のタイミングは、以下のシグナルが見られたときです。
- 顧客からの引き合いが継続的に増加し、現在のチーム体制では対応しきれなくなった
- 事業モデルの骨格が固まり、拡大のための明確な戦略が描けるようになった
- 初期の収益が発生し始め、追加投資の正当性が示せるようになった
組織拡大では、コアメンバーが持つ事業の知見や文化を新メンバーに伝承することが重要です。急激な拡大は組織の一体感を損ない、初期の機動力が失われるリスクがあるため、段階的な拡大を心がけましょう。また、拡大時には、新規メンバーが早期に戦力となるよう、オンボーディング(新メンバーの受け入れプロセス)の仕組みを整えることも必要です。
リソースが限られた状態からのスタートは一見不利に思えますが、無駄を省き、本質的な価値創造に集中できるという利点もあります。段階的なアプローチで着実に成果を積み上げることで、持続可能な新規事業を構築できます。
新規事業立ち上げメンバーについてよくある質問(FAQ)

新規事業の立ち上げメンバーに関して、多くの企業が共通して抱える疑問があります。ここでは、よくある質問とその回答を紹介します。
- メンバーは何名からスタートするのが理想ですか?
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新規事業の初期メンバーは、3〜5名程度でスタートするのが理想的です。この人数であれば、必要な機能を最低限カバーしつつ、意思決定のスピードとチームの機動力を維持できます。
具体的には、事業責任者1名、プロダクトマネージャーまたはビジネスデベロップメント担当1名、エンジニア1〜2名、デザイナー1名といった構成が基本です。ただし、事業の性質によって必要な専門性は異なるため、BtoB(企業向けビジネス)サービスであればBD担当を強化し、技術主導型のサービスであればエンジニアを増やすなど、柔軟に調整します。
重要なのは、メンバー数よりも「各役割が明確に定義され、責任者が存在すること」です。少人数であっても、一人ひとりが複数の役割を兼務しながら、事業推進に必要な機能を網羅できる体制を整えましょう。また、初期段階では少数精鋭を維持し、事業の方向性が固まってから段階的にメンバーを増やすアプローチが、リスクを抑えつつ成長する上で効果的です。
10名以上の大規模チームでスタートすることは、特別な理由がない限り推奨されません。チームが大きくなると、コミュニケーションコストが増大し、意思決定が遅くなり、初期の柔軟性が損なわれる可能性があります。
- 社内にエンジニアが一人もいませんが、立ち上げは可能ですか?
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社内にエンジニアがいない場合でも、新規事業の立ち上げは十分可能です。とくに初期段階では、外部パートナーやフリーランスのエンジニアを活用することで、技術的な開発を進めることができます。
ただし、いくつかの条件を満たしておくことが必要です。
- 社内メンバーの技術リテラシー
社内のコアメンバーが技術的な基礎知識を持ち、エンジニアと適切にコミュニケーションできることが重要です。プログラミングができなくても、システム開発の基本的なプロセスや技術的な制約を理解していれば、外部エンジニアと効果的に協働できます。 - 信頼できる外部パートナーの確保
前述した「伴走型」「共創型」のパートナーであれば、単なる開発代行ではなく、技術面での助言や提案も得られます。長期的な関係を前提としたパートナーシップを構築することで、事業の成長に合わせた継続的な支援が期待できます。 - 適切なタイミングでの内製化
事業が軌道に乗り始めたら、社内エンジニアの採用や育成を検討します。ただし、非IT企業でのエンジニア採用は難易度が高いため、まずは外部パートナーに「技術顧問(CTO代行)」として入ってもらい、採用面接の代行や組織作りから支援してもらう方法が現実的です。
エンジニア不在での立ち上げでは、技術的な依存度が高い事業モデルは避け、まずは技術リスクの低いサービスから始めることも一つの戦略です。市場の反応を確認してから、段階的に技術投資を拡大する方が、リスクを抑えられます。
- 社内メンバーの技術リテラシー
- メンバーの評価制度はどう設計すればいいですか?
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新規事業メンバーの評価制度は、既存事業とは異なる基準で設計する必要があります。既存事業のような明確なKPIや売上目標が設定しにくいため、プロセスと学習を重視した評価が適しています。
評価制度設計のポイントは以下の通りです。
- プロセスと学習、そして「撤退判断」を評価する
短期的な成果だけでなく、仮説検証のサイクルを回せているかを評価します。また、新規事業では「筋が悪い」と早期に判断し、傷が浅いうちに「撤退・ピボット(方向転換)」を決断できたことも、会社の資産を守った成果として高く評価すべきです。 - 定量指標と定性評価を組み合わせる
- 定量指標: 顧客インタビュー実施数、検証した仮説の数、プロトタイプのイテレーション回数など
- 定性評価: 顧客理解の深さ、チームへの貢献度、新しい知見の獲得など
- 評価サイクルを柔軟に設定する
既存事業の年次評価ではなく、四半期ごとやプロジェクトのマイルストーンごとに評価を行うことで、迅速なフィードバックと軌道修正が可能になります。 - 透明性と柔軟性を確保する
評価制度をメンバーと事前に合意し、透明性を保つことが重要です。新規事業の不確実性を考慮し、評価基準も事業の進展に応じて見直す柔軟性を持たせましょう。
また、金銭的報酬だけでなく、以下のようなインセンティブを組み込むことも、メンバーのモチベーション維持に効果的です。
- 事業の成功時のストックオプション
- キャリア上の成長機会
- 新しいスキル習得の支援
新規事業では、短期的な失敗を許容しつつ、長期的な学習と成長を促す評価制度が、チームの持続的なパフォーマンスを引き出します。
- プロセスと学習、そして「撤退判断」を評価する
まとめ:強力な新規事業立ち上げメンバーを構築し、事業を成功へ導こう

新規事業の成功は、優れたアイデアだけでなく、それを実現する人材によって決まります。本記事では、新規事業立ち上げに必要な役割、メンバー選定の基準、外部パートナーの活用方法、そしてリソースが限られた状況での立ち上げ手順について解説しました。
新規事業では、プロダクトマネージャー、ビジネスデベロップメント、エンジニア・デザイナー、責任者という4つの役割が不可欠です。それぞれが明確な責任を持ち、協働することで、事業は前進します。メンバー選定では、スキル以上に志向性を重視し、不確実性を楽しめる人材を選ぶことが重要です。
社内にリソースが不足している場合でも、コアメンバーを確保し、伴走型・共創型の外部パートナーと協業することで、事業の立ち上げは可能です。段階的なアプローチで仮説検証を重ね、成果が見えてから組織を拡大することで、リスクを抑えながら事業を成長させられます。
新規事業の立ち上げには、多くの挑戦と不確実性が伴いますが、適切なメンバー構成と明確な役割分担があれば、成功の可能性は大きく高まります。
Incubation Base株式会社は、新規事業の立ち上げを伴走型でサポートしています。事業戦略の策定から仮説検証、プロダクト開発まで、一貫した支援を通じて、お客様の新規事業を成功へと導きます。社内にリソースが不足している、初めての新規事業で進め方に不安がある、といった課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。経験豊富なチームが、貴社の事業成長をサポートします。