新規事業立ち上げの進め方|プロセス・必要なこと・失敗しない手順を解説

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新規事業立ち上げの進め方|プロセス・必要なこと・失敗しない手順を解説

新規事業の立ち上げは、企業の成長戦略において重要な取り組みですが、その進め方を誤ると、多くの時間とリソースを無駄にしてしまいます。新規事業では確立された市場や顧客が存在せず、不確実性が極めて高い環境での意思決定が求められます。そのため、仮説検証を繰り返しながら柔軟に方向転換していく独自のプロセスが不可欠です。

本記事では、新規事業立ち上げを成功に導くための具体的なプロセスと、各段階で必要なスキル・フレームワーク・対策について、実践的な視点で解説します。

この記事でわかること
  • 新規事業立ち上げと既存事業の本質的な違い
  • 失敗しない新規事業立ち上げの7つのステップとプロセス
  • 推進リーダーとメンバーに必要なスキルセット
  • 企画・検証フェーズで活用すべきフレームワークと使い方
  • 新規事業が「きつい」と言われる理由と具体的な対策
  • 活用できる助成金と外部パートナーの選定基準

初めて新規事業を任された方でも、体系的なプロセスと実践的なノウハウを理解し、自社の状況に応じた適切な進め方を選択できるようになります。

目次

新規事業立ち上げとは何か?既存事業との決定的な違い

新規事業立ち上げとは何か?既存事業との決定的な違い

新規事業立ち上げとは、企業が既存の事業領域とは異なる新しい製品・サービスを開発し、市場に投入して収益化を目指す一連の取り組みです。企業の持続的な成長を実現するための重要な戦略であり、市場環境の変化に対応し、新たな収益源を確保する手段として位置づけられます。

既存事業と新規事業では、前提条件や求められるアプローチが根本的に異なることを理解することが大切です。

既存事業と新規事業の決定的な違い

既存事業では、確立された市場、明確な顧客ニーズ、実証済みのビジネスモデル、そして豊富なデータが存在します。そのため、計画通りに実行し、効率を高めることが成功のポイントです。

一方、新規事業ではこれらの要素がほとんど存在せず、すべてが仮説の状態からスタートします。既存事業における意思決定は、過去のデータや成功事例に基づいて行われ、リスクは比較的予測可能です。

しかし新規事業では、データが不足しているため、仮説を立てて検証し、結果に基づいて方向修正するプロセスが不可欠となります。この「計画実行型」と「仮説検証型」の違いを理解せず、既存事業の進め方を適用すると、柔軟性を失い、市場の変化に対応できなくなります。

新規事業が「正しい進め方」を間違えやすい理由

新規事業を任された担当者の多くは、既存事業での成功体験を持っています。そのため、詳細な事業計画を作成し、承認を得てから実行に移すという既存事業のプロセスを踏襲しがちです。しかし、新規事業では当初の計画通りに進むことはほとんどなく、むしろ計画に固執することが失敗の原因となります。

また、既存事業では「失敗を避けること」が重視されますが、新規事業では「早く失敗し、学習すること」が重要です。完璧な計画を追求するあまり、市場投入が遅れ、競合に先を越されたり、顧客ニーズの変化に取り残されたりするケースが頻繁に発生します。

さらに、既存事業では明確なKPI(重要業績評価指標)と評価基準が設定されていますが、新規事業では初期段階で適切なKPIを設定することが困難です。売上や利益といった既存事業の指標で評価しようとすると、短期的な成果を求める圧力が高まり、本来必要な仮説検証や方向転換の機会を失います。

新規事業立ち上げに必要な思考の転換

新規事業を成功させるには、「不確実性を前提とした進め方」への思考転換が必要です。計画通りに進めることよりも、市場からの学びを最大化し、柔軟に方向修正することを優先します。完璧な製品を目指すのではなく、最小限の機能で市場の反応を確認し、改善を繰り返すアプローチが効果的です。

また、リソースの使い方も異なります。既存事業では効率的な資源配分が求められますが、新規事業では「小さく始めて、成功の兆しが見えたら投資を拡大する」という段階的な投資が適しています。初期段階で大規模な投資を行うと、方向転換が困難になり、失敗時の損失が大きくなってしまいがちです。新規事業と既存事業の違いを正しく理解し、それぞれに適した進め方を選択することが、新規事業成功への第一歩です。

新規事業立ち上げのプロセスと流れ【7ステップ】

新規事業立ち上げのプロセスと流れ【7ステップ】

新規事業の立ち上げには、アイデア創出から本格的な市場投入まで、段階的に進めるべきプロセスがあります。各ステップを適切に実行し、次の段階に進む前に必要な検証を行うことで、失敗のリスクを最小限に抑えることができます。

1. アイデア創出と市場課題の発見

新規事業の出発点は、解決すべき市場課題の発見とアイデアの創出です。優れたアイデアとは、単なる思いつきではなく、実在する顧客の課題を解決し、対価を支払う価値があると認められるものです。

このステップでは、市場調査、顧客インタビュー、トレンド分析などを通じて、未解決の課題やニーズを特定します。重要なのは、「自社が作りたいもの」ではなく、「顧客が本当に必要としているもの」を起点に考えることです。既存の製品やサービスに不満を持つ顧客の声、業界の非効率な部分、技術革新によって可能になった新しい価値提供などが、有望なアイデアの源泉となります。

また、アイデア創出では多様な視点を取り入れることが重要です。社内の異なる部署のメンバー、外部の専門家、そして実際の顧客候補を巻き込み、ブレインストーミングやデザイン思考のワークショップを実施することで、質の高いアイデアが生まれやすくなります。この段階では、量を重視し幅広いアイデアを収集した上で、市場性や実現可能性の観点から絞り込みを行うことを心がけましょう。

2. ビジネスモデルの策定と仮説検証

有望なアイデアが見つかったら、それをどのように収益化するかというビジネスモデルを策定します。ビジネスモデルとは、「誰に、何を、どのように提供し、どう収益を得るか」を明確にした事業の設計図です。ターゲット顧客、提供価値、収益モデル、コスト構造、競合優位性などを定義しましょう。ただし、この段階ではすべてが仮説であることを認識し、「正しいかどうか」を検証することが次の重要な作業となります。

仮説を明確にするには、リーンキャンバスやビジネスモデルキャンバスといったフレームワークを活用し、事業の全体像を整理します。仮説検証では、最も不確実性の高い仮説から優先的に検証しましょう。「顧客は本当にこの課題を感じているか」「提案する解決策に価値を感じるか」「対価を支払う意思があるか」といった根本的な問いに対して、実際の顧客候補にインタビューを行ったり、簡易的なプロトタイプを見せて反応を確認したりすることが必要です。

3. プロトタイプ開発とPoC

ビジネスモデルの仮説がある程度検証できたら、実際にプロトタイプ(試作品)を開発し、PoCを実施します。PoCとはProof of Conceptの略で、概念実証を意味し、アイデアが技術的・事業的に実現可能かを小規模に検証するプロセスです。プロトタイプは、完成度よりもスピードを優先し、最小限の機能で顧客の反応を確認できるMVP(実用最小限の製品)として開発します。

たとえば、本格的なシステム開発の前に、モックアップや簡易版のサービスを作成し、実際のユーザーに使ってもらいフィードバックを収集します。このアプローチにより、大規模な投資を行う前に、製品が市場に受け入れられるかを確認できます。

PoCでは、定量的なデータと定性的なインサイトの両方を収集します。何人のユーザーが実際に利用したか、どの程度の頻度で使われたか、どの機能が最も評価されたかといった数値データに加えて、ユーザーの感想や要望、使用時の行動観察などから得られる質的な情報も重要です。これらのフィードバックを基に、次の改善や方向転換の判断を行います。

4. 課題抽出とブラッシュアップ

PoCを通じて得られたフィードバックを分析し、製品やビジネスモデルの課題を抽出します。この段階では、顧客の期待と現状のギャップを明確にし、優先順位をつけて改善を進めていくことが一般的です。課題抽出では、表面的な問題だけでなく根本原因を探ることを意識しましょう。たとえば、「ユーザーが継続利用しない」という現象の背後には、「価値を十分に感じていない」「使い方がわかりにくい」「競合製品の方が優れている」など、さまざまな原因が考えられます。ユーザーインタビューや行動データの分析を通じて、真の原因を特定し、効果的な改善策を考えましょう。

また、ブラッシュアップのプロセスでは、仮説検証のサイクルを高速で回すことが重要です。改善案を実装し、再度ユーザーに試してもらい、結果を評価するというサイクルを繰り返すことで、製品の市場適合性(プロダクトマーケットフィット、PMF)を高めていくことが可能になります。

※PMF:製品が市場のニーズを満たし、顧客が自発的に利用し、推奨してくれる状態のこと

5. 事業計画の策定と予算確保

製品の市場適合性がある程度確認できたら、本格的な事業展開に向けて詳細な事業計画を策定します。事業計画には、市場分析、競合状況、販売戦略、収益予測、必要な投資額、リスクとその対策などが含まれます。

事業計画策定では、楽観的なシナリオだけでなく、現実的なシナリオ、悲観的なシナリオの3パターンを用意することが推奨されます。新規事業では予測通りに進まないことが一般的であるため、複数のシナリオを準備することで、状況に応じた柔軟な対応が可能になるからです。

予算確保では、経営層に対して事業の意義と成功の可能性について、説得力を持って説明する必要があります。これまでの検証結果、顧客からのポジティブなフィードバック、市場規模や成長性のデータなどを根拠として示し、投資対効果を明確にします。また、段階的な投資計画を提案し、各マイルストーンでの成果を基に次の投資判断を行う仕組みを設けることで、経営層のリスク懸念を軽減できます。

6. 組織の拡大と本格的な実行体制構築

これまでの少数精鋭チームから、専任部署への昇格や増員を行うフェーズです。事業計画と予算が承認されたら、本格的な事業推進に向けてチームを再編成・拡大します。

チームには、事業責任者、プロダクトマネージャー、ビジネスデベロップメント担当、エンジニア、デザイナーなど、事業推進に必要な役割を配置します。チーム編成では、スキルだけでなく、新規事業への適性や志向性を重視します。不確実性を楽しめる人材、主体的に行動できる人材、顧客の声に謙虚に耳を傾けられる人材を選ぶことがポイントです。

また、チームメンバー間の相性やコミュニケーションの質も重視し、少数精鋭で密接に協働できる体制も整えましょう。実行体制の構築では、意思決定のプロセス、定例ミーティングの運営、進捗管理の方法、社内外とのコミュニケーション体制などを明確にすることが大切です。新規事業では迅速な意思決定が求められるため、権限を現場に委譲し、チームが自律的に判断できる環境を整えることが求められます。

7. 本格的なローンチとグロース

準備が整ったら、製品やサービスを本格的に市場に投入します。ローンチでは、初期の顧客獲得、ブランド認知の向上、フィードバックの収集を主な目的とします。ローンチ後は、顧客獲得コスト、顧客生涯価値、解約率、Net Promoter Score(顧客推奨度を測る指標)などのKPIをモニタリングし、事業の健全性を継続的に評価します。これらの指標を基に、マーケティング戦略、製品改善、カスタマーサポート体制などを最適化していきましょう。

また、グロースフェーズでは、事業の拡大戦略を実行します。顧客セグメントの拡大、新機能の追加、販売チャネルの多様化、組織の拡大などを段階的に進めていくことが求められますが、急激な拡大は組織の混乱やサービス品質の低下を招く可能性があるため、事業の基盤が固まってから計画的に成長させることが重要です。

新規事業の立ち上げは直線的なプロセスではなく、各段階で得られた学びを基に前の段階に戻って修正することも頻繁に発生します。柔軟性を保ちながら、これらの7つのステップを着実に進めることが、成功への道筋です。

新規事業立ち上げで本当に必要なスキルと人材

新規事業立ち上げで本当に必要なスキルと人材

新規事業を成功させるためには、適切なスキルと志向性を持った人材を配置することが不可欠です。既存事業で優秀な人材が、新規事業でも同様に成果を出せるとは限らないため、新規事業特有の要求に応えられる人材を見極める必要があります。

推進リーダーに必要な能力

新規事業の推進リーダーは、事業全体の方向性を定め、チームを牽引する中心的な役割を担います。リーダーに求められる能力は、既存事業のマネージャーとは異なる特性を持ちます。

不確実性の中での意思決定力

新規事業では、十分な情報やデータが揃わない状況で重要な判断を下す場面が頻繁に発生します。リーダーには、限られた情報の中でも仮説を立て、リスクを評価し決断する能力が求められます。また、決断した後も市場の反応を見ながら柔軟に方向修正できる柔軟性も重要です。新規事業を推進させるには、完璧な情報を待つのではなく、適切なタイミングで判断できる決断力が必要となります。

顧客理解と共感力

新規事業の成功は、いかに顧客のニーズを深く理解し、それに応える製品やサービスを提供できるかにかかっています。リーダーには、顧客の立場に立って考え、課題を共感的に理解する能力が必要です。定期的に顧客と対話し、フィードバックを製品開発に反映させる姿勢が、市場適合性の実現につながります。

社内調整と資源獲得

新規事業は既存事業との利害対立が生じやすく、社内での理解や支援を得ることが難しい場合があります。リーダーには、経営層や関連部署と効果的にコミュニケーションを取り、必要な予算や人材を確保する交渉力が必要です。事業の進捗や成果を適切に報告し、組織全体の支持を維持することも重要な役割です。

メンバーに求められるスキルセット

新規事業チームのメンバーには、専門的なスキルに加えて、新規事業特有の環境で成果を出せる能力が求められます。

専門領域での実務能力

プロダクトマネージャー、エンジニア、デザイナー、ビジネスデベロップメントなど、各メンバーは自身の専門領域で高い実務能力を持つ必要があります。ただし、新規事業では一人が複数の役割を兼務することも多いため、自分の専門外の領域についても基本的な理解を持ち、他のメンバーと協働できることが望ましいでしょう。

学習能力と適応力

新規事業では未知の市場や技術に取り組むことが多く、既存の知識だけでは対応できない状況が頻繁に発生します。メンバーには、新しい知識やスキルを迅速に習得し、変化する環境に適応する能力が求められるため、自己学習意欲が高く、試行錯誤を通じて成長できる人材を選びましょう。

主体性と行動力

新規事業では明確な指示やマニュアルが存在しないため、メンバー自身が課題を発見し、解決策を考え、実行に移す主体性が不可欠です。指示を待つのではなく、自ら情報を収集し、仮説を立て、検証するサイクルを回せる人材が成果を出します。また、失敗を恐れずにチャレンジできる行動力も重要な資質です。

協働とコミュニケーション能力

新規事業は少数精鋭のチームで進めることが多く、メンバー間の密接な協力が欠かせません。自分の意見を明確に伝えつつ、他者の視点も尊重し、建設的な議論ができるコミュニケーション能力が求められます。また、顧客や外部パートナーとも効果的にコミュニケーションを取り、必要な情報や支援を得られる関係構築力も重要です。

社内だけで足りないときの考え方

多くの企業では、新規事業に必要なすべてのスキルや人材を社内だけで揃えることが困難です。この場合、外部パートナーやフリーランス人材の活用が有効な選択肢となります。

コア機能と外部委託の区分け

すべてを外部に依存するのではなく、事業の中核となる機能は社内で保持し、補完的な機能を外部に委託するという区分けが重要です。たとえば、事業戦略の立案や顧客開拓は社内のコアメンバーが担い、技術開発やデザイン制作は外部パートナーと協業するといった形です。この区分けにより、事業の方向性を自社でコントロールしつつ、専門性の高い領域で外部の知見を活用できます。

段階的な内製化の検討

初期段階では外部パートナーに依存していた機能も、事業が成長し方向性が固まった段階で、段階的に内製化することを検討しましょう。とくに、事業の競争優位性の源泉となる技術やノウハウは、長期的には社内に蓄積することが理想的です。ただし、内製化にはコストと時間がかかるため、事業のステージと戦略に応じて適切なタイミングを見極める必要があります。

外部人材との協働体制の構築

外部パートナーを活用する際は、単なる発注者と受注者の関係ではなく、チームの一員として協働できる体制を構築することが重要です。定期的なミーティング、情報共有、共通の目標設定などを通じて、内部メンバーと外部パートナーが一体となって事業を推進できる環境を整えましょう。

社内リソースの制約を理由に新規事業を諦めるのではなく、戦略的に外部リソースを活用しながら、段階的に事業を成長させるアプローチが現実的かつ効果的です。

新規事業開発で役立つフレームワークと進め方 

新規事業開発で役立つフレームワークと進め方 

新規事業の開発では、体系的なフレームワークを活用することで、思考を整理し、効率的に仮説検証を進めることができます。ただし、フレームワークは万能ではないので、自社の状況に応じて適切に使い分け、柔軟に活用しましょう。

新規事業におけるフレームワークの必要性

フレームワークとは、特定の課題を解決したり、意思決定を行ったりするための体系的な枠組みや手法です。新規事業開発においてフレームワークが有効な理由は、複雑な情報を整理し、検討すべき要素を漏れなく確認できる点にあります。

新規事業では、市場、顧客、競合、自社の強み、ビジネスモデル、収益構造など、多岐にわたる要素を同時に検討する必要があります。フレームワークを用いることで、これらの要素を構造化し、チーム内で共通認識を形成しやすくなります。また、経験の浅いメンバーでも、フレームワークに沿って考えることで、一定の質を保った分析や企画が可能になります。

その一方、フレームワークに頼りすぎると型にはまった発想に陥り、独自性のあるアイデアが生まれにくくなる危険性もあります。フレームワークはあくまで思考の補助ツールであり、最終的には市場や顧客の実態に基づいた独自の判断が必要である点を意識しておきましょう。

企画フェーズで使うべきフレームワーク

新規事業の企画フェーズでは、市場環境の分析、自社の強みの把握、事業コンセプトの明確化などを行うために、以下のフレームワークが有効です。

3C分析

3C分析は、Customer(顧客・市場)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点から事業環境を分析するフレームワークです。顧客分析では、ターゲット顧客のニーズ、課題、購買行動などを明確にします。競合分析では、既存の競合企業や代替製品の強み・弱みを把握し、自社分析では保有する技術、ブランド、顧客基盤などの強みを整理します。これら3つの視点を統合することで、自社が優位性を発揮できる領域を特定できます。

SWOT分析

SWOT分析は、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の4つの要素を整理するフレームワークです。内部環境である強みと弱み、外部環境である機会と脅威を明確にすることで、事業戦略の方向性を導き出します。SWOT分析を活用すれば、たとえば、自社の強みを活かして市場機会を捉える戦略や、弱みを補強して脅威に対抗する戦略などを検討できます。

STP分析

STP分析は、Segmentation(市場細分化)、Targeting(標的市場の選定)、Positioning(市場での位置づけ)の3つのステップで構成されるマーケティング戦略のフレームワークです。市場を細分化し、どのセグメントを狙うか決定し、そのセグメントにおいてどのようなポジションを確立するかを明確にする目的があります。新規事業では市場全体を広く狙うのではなく、特定のニッチセグメントに集中することがポイントです。そのため、STPによる明確なターゲティングが重要となります。

ジョブ理論

ジョブ理論は、顧客が製品やサービスを「雇用」するのは、達成したい特定の「ジョブ」があるからだという考え方です。顧客が本当に求めているのは製品そのものではなく、その製品によって解決される課題や達成される目的であるという視点に立ちます。この理論を用いることで、表面的なニーズではなく、顧客の根本的な動機を理解し、より的確な価値提案ができるようになります。

リーンキャンバス

リーンキャンバスは、ビジネスモデルを1枚のシートに整理するフレームワークで、課題、顧客セグメント、独自の価値提案、解決策、収益の流れ、コスト構造、主要指標、圧倒的な優位性、チャネルの9つの要素で構成されます。従来の詳細な事業計画書よりも簡潔で、仮説を可視化しチーム内で共有しやすいという利点があります。また、検証結果に基づいて素早く修正できる柔軟性も特徴です。

仮説検証を回すためのリーンスタートアップとデザイン思考

企画フェーズで立案した事業コンセプトを検証し、改善していくためには、リーンスタートアップとデザイン思考のアプローチが有効です。

リーンスタートアップ

リーンスタートアップは、「構築・計測・学習」のサイクルを高速で回すことで、効率的に事業を成長させる手法です。完璧な製品を作ってから市場に出すのではなく、最小限の機能を持つMVPを素早く開発し、顧客の反応を計測したうえでそこから学んだことを次の改善に活かします。

このアプローチの核心は、「検証された学び」を最大化することです。仮説を立て、それを検証するための実験を設計し、結果から次のアクションを決定します。もし仮説が間違っていれば、方向転換(ピボット)を行い、新たな仮説を検証します。このサイクルを繰り返すことで市場が求める製品に近づいていきます。

また、リーンスタートアップでは、無駄な機能開発や過剰な投資を避け、本当に価値のある要素に集中することも可能になります。早期に失敗を発見できるため、大きな損失を回避できるという利点もあります。

デザイン思考

デザイン思考は、顧客の視点に立って課題を深く理解し、創造的な解決策を生み出すアプローチです。共感、問題定義、アイデア創出、プロトタイピング、テストの5つのステップで構成されます。

共感のステップでは、顧客の行動を観察したり、インタビューを行ったりして、顧客の体験や感情を深く理解します。その後、収集した情報を基に、解決すべき本質的な課題を明確にする問題定義の段階に移り、ブレインストーミングなどの手法を用いて、多様な解決策(アイデア)を創出します。

生み出したアイデアをもとに、簡易的な試作品(プロトタイプ)を作成し、テストでは実際のユーザーに使ってもらいフィードバックを得ます。

デザイン思考の特徴は、早い段階で具体的な形にし、顧客の反応を見ることで学習を促進するという点です。また、失敗を恐れずに多様なアイデアを試す文化を醸成し、イノベーションを生み出しやすくします。リーンスタートアップとデザイン思考は相互に補完的であり、両方を組み合わせることで、顧客中心の事業開発を効率的に進めることができます。

新規事業立ち上げが「きつい」と言われる理由と対策

新規事業立ち上げが「きつい」と言われる理由と対策

新規事業の立ち上げは、やりがいがある反面、「きつい」と感じる担当者が多いのも事実です。その理由を理解し、適切な対策を講じることで、持続可能な事業推進が可能になります。

既存事業との利害対立や社内の理解不足

新規事業は既存事業とリソースを競合する関係にあるため、社内での利害対立が生じやすい構造があります。既存事業を担当する部門からは、「新規事業に予算や人材を割くより、既存事業に投資すべき」という意見が出ることもあるでしょう。

また、新規事業は短期的な収益が見込めないため、経営層や他部門からの理解を得ることが難しい場合があります。「いつ成果が出るのか」「本当に成功するのか」という疑問や批判にさらされ、担当者は精神的なプレッシャーを感じがちです。

対策

社内の理解を得るには、定期的なコミュニケーションと透明性の確保が重要です。事業の進捗、検証結果、学びを定期的に報告し、たとえ失敗があってもそこから得られた洞察を共有します。

効果的なアプローチ

  • 新規事業の意義を「企業の長期的な成長や市場変化への対応」という観点から説明する
  • 経営層から明確な支持を得て、トップダウンで重要性を示す
  • 経営層との定期的な対話を通じて、事業への理解と支援を維持する

専門スキルを持つ人材の不足と実務タスクの肥大化

新規事業では、戦略立案、市場調査、製品開発、営業、マーケティング、財務管理など、多岐にわたる業務を少数のメンバーでこなす必要があります。専門スキルを持つ人材が不足していると、一人ひとりの負担が増大し、業務過多に陥ります。

また、新規事業では予期せぬ問題が頻繁に発生し、当初の計画にない作業が次々と発生します。このような状況では、計画通りに業務を進めることが困難になり、長時間労働や心身の疲弊につながります。

対策

業務の優先順位を明確にし、重要度の高いタスクに集中することが重要です。とくに初期段階では、「顧客の課題を理解すること」「仮説を検証すること」に焦点を当て、それ以外の作業は最小限に抑えます。完璧を求めず80%の完成度で市場に出し、フィードバックを基に改善するアプローチが効果的です。

リソース不足を補う方法

  • 外部パートナーやフリーランス人材を戦略的に活用する
  • コア機能は社内で保持し、補完的な機能を外部に委託する
  • チームメンバーの健康とモチベーション維持のため、適切な休息と息抜きの機会を確保する

不確実な状況下での意思決定と成果に対する重圧

新規事業では、正解がわからない状況で重要な判断を下す場面が頻繁にあります。「この方向性で進めて良いのか」「この機能を優先すべきか」といった判断に確信が持てず、不安やストレスを感じる担当者は少なくありません。

また、新規事業への期待が高いほど、「成果を出さなければ」というプレッシャーも大きくなります。とくに自分が提案した事業である場合、失敗が自分の評価に直結するという重圧を感じます。

対策

不確実性を受け入れ、「失敗は学習の機会」という文化を組織に根づかせることが重要です。新規事業では、すべての判断が正しいとは限らず、むしろ早期に失敗を発見し軌道修正することが有効です。経営層も含めてこの考え方を共有し、プロセスを評価する仕組みを構築しましょう。

心理的負担を軽減する工夫

  • 一人で抱え込まず、チームやメンターと相談しながら意思決定を進める
  • 多様な視点からの意見を聞き、判断の質を高める
  • 小さなマイルストーン(検証完了、顧客からのポジティブなフィードバック、新しい学び)の達成をチームで共有し、モチベーションを維持する

大きな成果が出るまでには時間がかかるため、小さな成功を認識し祝うことも重要です。

新規事業の「きつさ」は避けられない側面もありますが、適切な対策と組織のサポートがあれば、乗り越えることが可能です。困難を成長の機会と捉え、チーム全体で支え合う文化を築くことで、持続的に事業を推進できるでしょう。

新規事業立ち上げで活用したい助成金と外部パートナーの選び方

新規事業立ち上げで活用したい助成金と外部パートナーの選び方

新規事業の立ち上げには資金と専門知識が必要ですが、助成金や外部パートナーを活用することで、これらの課題を軽減できます。

新規事業で申請できる助成金・補助金

新規事業の立ち上げにはさまざまなコストが発生しますが、国や地方自治体が提供する助成金・補助金を活用することで、資金面の負担を軽減できます。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、新分野への展開や業態転換など、思い切った事業再構築に取り組む中小企業等を支援する制度です。新規事業の開発、設備投資、マーケティング費用など、幅広い用途に活用できます。補助率は経費の一部(中小企業の場合は通常2分の1から3分の2程度)で、補助上限額は事業規模や申請枠によって異なります。

参考:経済産業省「事業再構築補助金」

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、中小企業等が行う革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善のための設備投資を支援する制度です。新規事業で新しい製品を開発する際の試作品製作費や設備導入費などに活用できます。

参考:全国中小企業団体中央会「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公式ホームページ ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金総合サイト」

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が経営計画を作成し、販路開拓や生産性向上に取り組む際の経費を補助する制度です。新規事業の市場調査、広告宣伝、Webサイト制作などの費用に活用できます。

参考:「中小企業庁」小規模事業者持続化補助金について

地方自治体独自の補助金

各地方自治体も独自の補助金制度を設けている場合があります。地域の産業振興や雇用創出を目的とした新規事業支援、スタートアップ支援などがあり、自社の所在地や事業内容に応じて活用できる制度を確認することが推奨されます。

助成金・補助金活用の注意点

助成金・補助金の申請には、詳細な事業計画書の作成や審査プロセスがあります。また、多くの場合、経費を先に支払った後に補助金が交付される「後払い方式」であるため、一時的な資金負担が発生します。申請要件や締め切りも制度によって異なるため、早めに情報を収集し、計画的に申請を進めることが重要です。

外部パートナーの選び方

社内リソースが不足している場合、外部パートナーとの協業も有効です。以下の点に注意し、適切なパートナーを選びましょう。

事業への理解と共感

単に技術力やサービス提供能力があるだけでなく、自社の事業ビジョンや目指す価値に共感し、事業の成功を共に追求する姿勢を持つパートナーを選択することが重要です。初回の打ち合わせで事業の背景や目的について深く質問してくるか、自社の課題に対して主体的に提案を行うかなどを確認すると、よりよいパートナーを選別できるでしょう。

伴走型のサポート体制

新規事業では状況が刻々と変化するため、固定的な契約や納品だけで終わるのではなく、継続的に伴走し、柔軟に対応できるパートナーが理想的です。定期的なミーティング、進捗報告、課題の共有など、密接なコミュニケーションを取りながら協働できる体制があるかを確認します。

実績と専門性

パートナーが過去にどのようなプロジェクトを手がけ、どのような成果を出してきたかは重要な判断材料です。ただし、単なる実績の数ではなく、自社の事業領域や課題に近いプロジェクトの経験があるか、そこでどのような価値を提供したかを具体的に確認します。

コミュニケーションの質

新規事業では頻繁なコミュニケーションが必要となるため、ストレスなく対話できる相手を選ぶことが重要です。レスポンスの速さ、説明のわかりやすさ、こちらの意図を正確に理解する力などを、初期の対話から評価しましょう。

契約の柔軟性

新規事業は方向転換が頻繁に発生するため、柔軟な契約形態を提案できるパートナーが望ましいです。たとえば、最初は短期契約でスタートし双方の相性や成果を確認した上で継続を判断する方法や、成果連動型の報酬体系などを検討できるパートナーは、リスクを共有する姿勢があると言えます。

適切な助成金の活用と信頼できる外部パートナーとの協業により、社内リソースの制約を乗り越え、新規事業を成功へと導くことができます。

新規事業立ち上げに関するよくある質問(FAQ)

新規事業立ち上げに関するよくある質問(FAQ)

新規事業の立ち上げに関して、多くの担当者が共通して抱く疑問があります。ここでは、実務でよくある質問とその回答を紹介します。

新規事業の立ち上げは何人から始めるのが適切ですか?

新規事業の初期段階では、3〜5名程度の少数精鋭チームでスタートするのが適切です。この人数であれば、必要な機能を最低限カバーしつつ意思決定のスピードと柔軟性を維持できます。

具体的には、事業責任者1名、プロダクトマネージャーまたはビジネスデベロップメント担当者1名、エンジニア1〜2名、デザイナー1名といった構成が基本となります。

事業の性質によって必要な専門性は異なるため、技術主導型の事業であればエンジニアを増やし、営業重視の事業であればビジネスデベロップメント担当を強化するなど、柔軟に調整します。

重要なのは人数よりも、各役割が明確に定義され、責任者が存在することです。少人数であっても一人ひとりが複数の役割を兼務しながら、事業推進に必要な機能を網羅できる体制を整えましょう。

また、初期段階では少数を維持し、事業の方向性が固まり成果が見えてから段階的にメンバーを増やすアプローチが、リスクを抑えつつ成長する上で効果的です。10名以上の大規模チームでスタートすることは、特別な理由がない限り推奨されません。チームが大きくなると、コミュニケーションコストが増大し意思決定が遅くなり、初期に必要な機動力が損なわれる可能性があります。

新規事業はどれくらいの期間で成果を出すべきですか?

新規事業の成果が出るまでの期間は、事業の性質や市場環境によって大きく異なりますが、一般的には以下のような目安があります。

初期の仮説検証とPoCフェーズは1〜3か月程度で実施し、事業の実現可能性と市場の反応を確認します。この段階での成果は、売上ではなく、「顧客が課題を感じているか」「提案する解決策に価値を感じるか」といった仮説の検証結果です。

MVP開発とプロダクトマーケットフィットの探索には6か月〜1年程度を要します。この期間で、製品やサービスを市場に投入し、顧客からのフィードバックを基に改善を繰り返します。成果の指標は、初期顧客の獲得数、リピート率、顧客満足度などです。

本格的な収益化と事業の拡大には、さらに1〜3年程度かかることが一般的です。この段階で、安定した収益構造の確立、顧客基盤の拡大、組織の成長などが成果として求められます。

ただし、これらはあくまで目安であり、事業によっては短期間で成果が出る場合もあれば、より長期の投資が必要な場合もあります。重要なのは、各段階で明確なマイルストーンを設定し、その達成度を基に次のステップへの投資判断を行うことです。

経営層や関係者との間では、現実的な期待値を設定することが重要です。短期的な売上だけでなく、学習や検証のプロセスも成果として評価する仕組みを構築することで、持続的な事業推進が可能になります。

社内にエンジニアがいなくても新規事業は立ち上げられますか?

社内にエンジニアがいない場合でも、新規事業の立ち上げは可能です。とくに初期段階では、外部パートナーやフリーランスのエンジニアを活用することで、技術的な開発を進めることができます。

ただし、成功のためにはいくつかの条件を満たす必要があります。

  • 社内メンバーの基礎的な技術理解
    プログラミングができなくても、システム開発の基本的なプロセス、技術的な制約、開発期間の見積もり方などを理解していれば、外部エンジニアと効果的に協働できる
  • 信頼できる外部パートナーの確保
    単なる開発代行ではなく、事業の成功を共に目指す伴走型のパートナーを選ぶ。長期的な関係を前提とすることで、技術面での助言や提案も得られ、事業の成長に合わせた継続的な支援が期待できる
  • ノーコード・ローコードツールの活用
    プログラミング知識がなくても、Webサイトやアプリケーションを構築できるツールが充実している。初期のMVP開発を社内で行い、コストを抑えながら市場検証を進めることも可能

長期的には、事業がある程度の規模になったタイミングで、社内にエンジニアを採用することを検討しましょう。事業の中核技術や独自性を高める段階では、内製化が競争優位性の源泉となります。採用のタイミングは、事業の方向性が固まり、継続的な開発ニーズが明確になった時点が適切です。

エンジニア不在での立ち上げでは、技術的な依存度が極めて高い事業モデルは避け、まずは技術リスクの低いサービスから始めることも戦略の一つです。市場の反応を確認してから、段階的に技術投資を拡大する方がリスクを抑

まとめ:新規事業立ち上げのプロセスを確実に進めるために

まとめ:新規事業立ち上げのプロセスを確実に進めるために

本記事では、新規事業立ち上げの7つのステップ、必要なスキルと人材、活用すべきフレームワーク、そして「きつい」と言われる理由とその対策について解説しました。新規事業の立ち上げは、企業の持続的な成長を実現するための重要な取り組みですが、成功させるためには既存事業とは異なるアプローチが必要です。

新規事業では、アイデア創出から仮説検証、プロトタイプ開発、事業計画策定、チーム編成、本格ローンチまで、段階的なプロセスを踏むことが重要です。各段階で適切なフレームワークを活用し、仮説検証を繰り返しながら、市場適合性を高めていきます。

また、推進リーダーには不確実性の中での意思決定力と顧客理解力が求められ、メンバーには専門スキルに加えて学習能力と主体性が必要です。社内リソースが不足している場合は、外部パートナーや助成金を戦略的に活用することで、事業を前進させましょう。

Incubation Base株式会社は、新規事業の立ち上げから成長まで、伴走型で支援しています。事業戦略の策定、市場調査、プロトタイプ開発、仮説検証、チーム構築など、新規事業の各段階で必要なサポートを提供し、お客様の事業を成功へと導きます。

初めて新規事業を任された方、社内にリソースや専門知識が不足している方、進め方に不安を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。

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