新規事業開発とは?成功へ導く手順・フレームワーク・失敗事例を解説

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多くの企業が「新規事業開発」を重要な経営課題として掲げ、DX推進や組織変革に取り組んでいます。しかし、いざ事業を立ち上げようとしても、具体的な進め方が不透明であったり、自社に適切なリソースが不足していたりするケースは少なくありません。

この記事では、新規事業開発の全体像を把握したい経営企画やDX推進の責任者に向けて、成功に必要なステップやフレームワークを詳しく説明します。

この記事でわかること
  • 新規事業開発の正確な意味と、企業が今取り組むべき背景
  • アイデア創出からスケール判断までの具体的な5つのステップ
  • 事業を成功させるために不可欠なスピード感と検証の考え方
  • 戦略策定や顧客分析に役立つ主要なフレームワークの活用法
  • 多くの企業が陥る失敗パターンと、それを回避するための組織・リソース戦略

新規事業を成功させるためには、単なる戦略の立案だけでなく、エンジニアリングまで含めた一気通貫の実行体制が求められます。自社だけで完結させるリスクを最小限に抑え、確実性の高い事業開発を実現するための指針としてください。

目次

新規事業開発とは?企業が推進すべき理由と定義

新規事業開発とは?企業が推進すべき理由と定義

新規事業開発を効果的に進めるためには、まずその言葉が指す範囲と、なぜ現代の企業において優先順位が高いのかを正しく理解する必要があります。

新規事業開発の意味と定義

新規事業開発とは、企業がこれまでに提供してきた既存の製品やサービスとは異なる、新しい価値を市場に提供し、持続的な収益の柱を構築する一連のプロセスを指します。一般的には、アンゾフの成長マトリクスにおける「新製品開発」「新市場開拓」「多角化」の領域に該当する活動のことです。

このプロセスには、単なるアイデア出しだけでなく、市場調査、顧客課題の特定、プロトタイプの開発、ビジネスモデルの構築、そして事業のスケール化までが含まれます。既存事業の延長線上にある改善活動とは異なり、高い不確実性を伴う点が大きな特徴です。そのため、既存の組織構造や評価軸とは異なる、柔軟で迅速なアプローチが求められます。

※参考:「アンゾフの成長マトリクス」 | 経済産業省 中小企業庁

企業に新規事業開発が必要な理由

企業が新規事業開発を推進すべき主な理由は、既存事業の市場飽和や技術革新によるビジネスモデルの陳腐化に対応するためです。主な理由は以下の3点に集約されます。

  •  単一の事業に依存するリスクを分散させ、収益源の多角化を図る
  • 新しい技術やビジネスモデルへの挑戦を通じて、イノベーションの創出をする
  • 新規事業で得たデータやノウハウを既存事業に還元し、企業全体の競争力を強化する

既存事業が堅調なうちに、次の成長エンジンを確保しておくことは、企業の持続可能性を確保するための必須戦略といえます。

新規事業開発の立ち上げ手順

新規事業開発の立ち上げ手順

新規事業の立ち上げは、理論だけでなく段階的な実行が不可欠です。ここでは、成功率を高めるための標準的な以下の5つのステップを解説します。

  • ステップ1:課題起点でテーマを設定する
  • ステップ2:顧客仮説と提供価値を明確にする
  • ステップ3:MVPを設計し最小コストで検証する
  • ステップ4:PoC・実証実験で事業性を見極める
  • ステップ5:スケール判断と組織設計をする

ステップ1:課題起点でテーマを設定する

新規事業の出発点は、市場や顧客が抱えている課題を見つけることです。自社ができることから考えるプロダクトアウトではなく、誰がどのような困りごとを抱えているかというニーズから逆算してテーマを設定します。

この段階では、全社的な経営戦略との整合性を保ちつつ、自社の強みやアセットを活かせる領域を定義してください。解決すべき課題が明確であればあるほど、その後の事業検証の精度は高まります。

ステップ2:顧客仮説と提供価値を明確にする

ターゲットとなる顧客を具体的に設定し、その顧客に対してどのような価値を提供するのかを言語化します。ここでは「誰に、何を、どのように提供し、なぜ自社がやるのか」という問いに答えられる状態を目指します。

想定顧客へのインタビューを行い、設定した課題が本当に存在し、お金を払ってでも解決したいものかどうかを確認してください。この段階で顧客との認識のズレを解消しておくことが、後の大幅な軌道修正を防ぐために重要です。

ステップ3:MVPを設計し最小コストで検証する

アイデアの有効性を確かめるために、必要最小限の機能だけを備えたプロダクトである「MVP(Minimum Viable Product)」を設計します。最初から完璧なシステムを構築するのではなく、核となる価値が顧客に伝わる最低限の形を作り、実際の反応を確かめることが目的です。

MVPの形態は、簡単なWebページや動画、手作業による代行サービスなど、コストをかけない方法を選択します。仮説が間違っていた場合には、素早く方針を転換できる柔軟性を持っておくことが重要です。

ステップ4:PoC・実証実験で事業性を見極める

MVPでの検証を経て、より詳細な「PoC(Proof of Concept:概念実証)」を実施します。ここでは、技術的な実現可能性だけでなく、顧客が継続的に利用するか、適切な価格で販売できるかといった事業性の検証に重点を置きます。

実際の利用シーンに近い環境でデータを取り、あらかじめ設定したKPI(重要業績評価指標)を達成できるかを評価します。検証の結果、十分な成果が得られないと判断した場合は、潔く撤退するか、別の切り口を検討する判断も必要です。

ステップ5:スケール判断と組織設計をする

事業の有効性が確認できたら、本格的な投資を行い事業を拡大させるフェーズに移ります。ここでは、マーケティング活動の強化や、安定したサービス運用を支えるためのシステム開発が必要です。

同時に、事業を継続的に成長させるための組織設計も重要となります。新規事業は既存事業とは異なるスピード感や意思決定基準を必要とするため、独立したユニットとして運営することが望ましい場合が多いでしょう。

新規事業開発を成功させるためのポイント

新規事業開発を成功させるためのポイント

新規事業を成功に導くには、手法だけでなく、推進する際のマインドセットや環境作りが重要です。以下の主な5つのポイントについて解説します。

  • 検証のスピードを重視する
  • スモールスタートでリスクを最小化させる
  • 顧客の解像度を上げる
  • 既存事業から独立した組織文化を作る
  • 実装・開発まで見据えた外部リソースを活用する

検証のスピードを重視する

市場環境は日々刻々と変化しており、検討に時間をかけすぎると、参入したときにはすでに競合他社が市場を支配している、あるいはニーズが消滅しているリスクがあります。完璧な計画を立ててから動き出すのではなく、不完全な状態でも市場に問いかけ、修正を繰り返す「アジャイル」な進め方が求められます。

スモールスタートでリスクを最小化させる

最初から多額の予算を投じるのではなく、小さな試行から始めることでリスクを最小化させることが重要です。

新規事業は、10個のプロジェクトのうち1個が成功すれば良いといわれるほど成功率が低いものです。一度の大きな失敗で事業全体が立ち行かなくなる事態を避け、検証コストを最適化しながら、筋の良い案件にリソースを集中させる「投資家的な視点」を持ちましょう。

顧客の解像度を上げる

「30代の男性」といった曖昧なターゲット設定では、顧客の心に刺さるサービスは生まれません。顧客がどのような生活を送り、どのような瞬間にストレスを感じ、どのような言葉で悩みを表現しているかまで、解像度を徹底的に高める必要があります。

デスクリサーチだけでなく、直接顧客の声を聞くインタビューや観察を行うことで潜在的な欲求を掘り起こすことができます。

既存事業から独立した組織文化を作る

既存事業の評価基準や承認プロセスをそのまま新規事業に適用すると、新しい芽が摘まれてしまうことが多々あります。既存事業は「効率化」や「ミスの排除」を重視しますが、新規事業は「創造性」や「学習速度」を重視する必要があるからです。

新規事業を推進するチームには、独立した予算や決裁権限を与え、失敗を許容する文化を醸成してください。経営層が「既存事業を守る」だけでなく「新しい事業を育てる」という姿勢を明確に示すことが、担当者のモチベーション維持につながります。

実装・開発まで見据えた外部リソースを活用する

自社にエンジニアやUI/UXデザイナーなどの専門人材が不足している場合、外部パートナーとの連携も視野に入れましょう。戦略立案からプロトタイプ開発、本番の実装までを一気通貫でサポートできる体制があると、コミュニケーションロスが減り、検証のサイクルが劇的に速まります。

外部の知見を取り入れることで、社内だけでは陥りがちなバイアスを排除し、客観的な視点で事業を磨き上げることができます。

新規事業開発で活用すべきフレームワーク

新規事業開発で活用すべきフレームワーク 

複雑な思考を整理し、チーム内での共通言語を作るためにフレームワークの活用が有効です。

主なフレームワークについて解説します。

  • 3C分析・PEST分析
  • ビジネスモデルキャンバス
  • カスタマージャーニーマップ
  • バリュープロポジションキャンバス

市場と競合を分析する「3C分析」「PEST分析」

事業の外部環境と内部環境を把握するために使用します。

  • 3C分析

Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点で分析し、勝機を見出します。

  • PEST分析

Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの要素から、事業を取り巻くマクロな動向を整理します。

これらの分析を通じて、今この市場に参入する妥当性や、自社が持つ独自の優位性を客観的に評価できます。

ビジネスの構造を可視化する「ビジネスモデルキャンバス」

ビジネスの全体像を9つの要素(顧客、提供価値、チャネル、収益の流れなど)に分解して1枚の図にまとめるフレームワークです。各要素の整合性が取れているか、収益のポイントがどこにあるかを一目で確認できるため、チーム内での認識合わせや、外部への説明に非常に役立ちます。

顧客体験を深掘りする「カスタマージャーニーマップ」

顧客がサービスを知り、購入し、利用し続けるまでの一連の流れを時系列で可視化します。

各タッチポイントにおける顧客の行動や感情の変化を追いかけることで、どこに課題があるのか、どのようなアプローチが有効なのかを具体的に特定できます。デジタルとリアルの接点が混在する現代のサービス設計には欠かせないツールです。

価値提案を明確にする「バリュープロポジションキャンバス」

顧客が求めていることと、顧客が抱える悩み、顧客が得たい利得に対し、自社の製品やサービスがどのように応えるかを整理します。顧客ニーズと提供価値のミスマッチを防ぎ、プロダクトマーケットフィット(PMF)を目指すための強力な指針となります。

新規事業開発で陥りやすい失敗事例と回避策

新規事業開発で陥りやすい失敗事例と回避策

失敗を100%避けることはできませんが、典型的なパターンを知ることで回避策を講じることは可能です。陥りやすい事例とその回避策について解説します。

全社戦略を「具体的な事業テーマ・案件」に落とし込めない

「AIを活用した新しいサービスを作れ」といった抽象的な指示だけでプロジェクトが動き出すと、方向性を見失いがちです。経営戦略としての目的が、コスト削減なのか、新規顧客の獲得なのか、それともブランドの刷新なのかを明確にする必要があります。

経営層と現場の間で、事業の「北極星指標(North Star Metric)」となる共通の目標を設定してください。何をもって成功とするかの合意形成を初期段階で行うことが重要です。

案件の精査ができず「検証(PoC)」の工数が肥大化する

PoC自体が目的化してしまい、ダラダラと検証を続けてしまうケースも失敗といえます。検証項目が多すぎたり、成功の基準が曖昧であったりすると、予算と時間だけを消費し、結局何も決まらないという事態に陥ります。

検証期間と、何をクリアすれば次のステップへ進むかという「撤退・継続基準」を事前に決めておきましょう。検証はなるべく小さく、早く行うことを徹底し、意思決定の回数を増やす仕組みを整えてください。

顧客不在の「プロダクトアウト」で開発を進めてしまう

「この技術を使えば素晴らしいものができるはずだ」という思い込みだけで開発を進め、誰にも必要とされないプロダクトを作ってしまうパターンです。技術力のある企業ほど、この罠に陥りやすい傾向があります。

開発に着手する前に、見込み顧客へのヒアリングを行い、プロトタイプへの反応を確認してください。顧客が抱える不満や不便こそが事業の源泉であることを忘れず、常に「顧客視点」でプロダクトを磨き直す姿勢が必要です。

まとめ:不確実性を乗り越え、新規事業開発を加速させるために

まとめ:不確実性を乗り越え、新規事業開発を加速させるために

新規事業開発を成功させるためには、顧客の切実な課題を起点とし、最小限のコストで素早く検証を繰り返すプロセスが欠かせません。不確実なビジネス環境の中では、既存事業の評価基準や組織文化にとらわれず、スピード感を持って市場の反応を確認し続けることが重要です。

Incubation Base株式会社では、事業の構想から市場への展開、その後の成長フェーズに至るまで、一貫した協力体制を構築します。アイデアの妥当性を迅速に判断するためのMVP構築やシステム開発に実績があり、実効性の高い検証をともに進めることが可能です。

「新規事業のアイデアはあるが、具体的な進め方がわからない」「社内の専門人材やリソースが不足している」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度お問い合わせください。不確実な環境下での挑戦を確実な成果へつなげるためのパートナーとして、全力で支援いたします。

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