DXを前提とした新規事業開発の立ち上げ手順|失敗事例やパートナー選びも解説

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企業を取り巻く環境が急速に変化する中、DX(デジタルトランスフォーメーション)を前提とした新規事業開発の重要性が高まっています。従来のビジネスモデルだけでは持続的な成長が困難になり、デジタル技術を活用した新しい価値創造が求められているためです。

しかし、多くの企業がDXと新規事業開発の両立に苦戦しています。構想段階で止まってしまうケースや、多額の投資をしても成果が出ないケースが後を絶ちません。単なるIT化やシステム導入とは本質的に異なるアプローチが必要であり、技術起点ではなく顧客の課題を起点に考え、デジタル技術を手段として活用し、素早く仮説検証を繰り返すプロセスが不可欠です。

本記事では、DXを前提とした新規事業開発の本質から、成功させるための5つの立ち上げ手順、よくある失敗事例と回避策、理想的な組織体制、そして失敗しないパートナーの選び方まで、実践的な視点で解説します。

この記事でわかること
  • 新DXを前提とした新規事業開発の本質と既存モデルとの違い
  • 成功に導く5つの立ち上げ手順(機会発見からグロースまで)
  • よくある3つの失敗パターンと具体的な回避策
  • DX新規事業に必要な3つの役割と理想的な組織体制
  • 失敗しないパートナー選定の3つのポイント
  • 予算・期間・既存システム連携に関する実務的な質問への回答

DXを前提とした新規事業開発では、デジタル技術の活用とビジネスモデルの設計を同時に進める必要があります。既存アセット(資産や強み)とデジタルを掛け合わせた機会発見、顧客検証による課題の特定、MVPによる素早い価値提供、PMF(プロダクトマーケットフィット)の検証、そしてグロースと自走化という段階的なプロセスを踏むことで、失敗のリスクを最小化できます。

目次

DXを前提とした新規事業開発とは?既存モデルとの違いと重要性

DXを前提とした新規事業開発は、従来の新規事業開発とは異なるアプローチと視点が必要です。単なるデジタル化ではなく、ビジネスモデル自体の変革を伴う取り組みであることを理解しましょう。

単なるIT化ではない「DX」と「新規事業」の関係性

DXとは、デジタル技術を活用してビジネスモデル、業務プロセス、企業文化を変革し、競争優位性を確立する取り組みです。単なるIT化やシステム導入とは異なり、顧客体験の向上や新しい価値創造を目指すものです。

IT化とDXの違い

項目従来のIT化DX
目的既存業務の効率化新しい価値創造・顧客体験の変革
具体例紙の帳票を電子化、手作業を自動化IoTデータを活用した予知保全サービス、AIによる業務プロセス全体の変革、生成AIを活用したカスタマーサポートの自動化、デジタルプラットフォームの構築
価値の源泉業務プロセスの改善データとデジタルサービス、AIによる高度な自動化と意思決定支援

DXを前提とした新規事業開発では、デジタル技術が事業の中核を担います。たとえば、製造業が製品の販売だけでなく、IoT(モノのインターネット)を活用して稼働データを収集し、予知保全サービスや最適化コンサルティングを提供する事業は、DX起点の新規事業です。製品そのものではなく、データとデジタルサービスが主な価値となります。

従来の新規事業とDX起点の新規事業の違い

項目従来の新規事業DX起点の新規事業
発想の起点既存の強みや技術から「何ができるか」(プロダクトアウト型)顧客の課題から「デジタルでどう解決するか」(マーケットイン型)
設計思想既存リソースの活用デジタル技術が可能にする新しい体験
開発プロセス詳細な計画→承認→実行(ウォーターフォール型)仮説→検証→修正の繰り返し(アジャイル型)
初期ターゲット外部顧客向けサービス社内業務の変革(PoC)から開始し、検証後に外部サービス化を検討
重視する要素計画の精度スピードと柔軟性

なお、DX起点の新規事業では、社内業務の課題を解決するPoC(概念実証)から始めるケースが多く見られます。社内の特定部門が抱える業務課題をデジタル技術で解決し、効果を検証した上で、将来的に外部向けサービスとして展開することを視野に入れるアプローチです。社内での検証により、実際の業務現場での有効性を確認してから外販できるため、リスクを抑えながら事業を育てることが可能です。

また、生成AIの急速な普及により、従来型のSaaSやノーコード・ローコードツールの位置づけも変化しつつあります。生成AIを活用することで、自社のデータや業務フローに最適化したシステムをスクラッチ開発することが以前より容易になっており、汎用的なSaaSでは自社のニーズに完全には合わない、既存システムとの連携が困難といった課題が顕在化しています。そのため、今後は「デファクトスタンダードとなった一部のSaaS」と「自社に最適化されたスクラッチ開発システム」の二極化が進む可能性があります。

現代のビジネス環境でDX起点の新規事業が求められる理由

DX起点の新規事業開発が求められる背景には、市場環境の構造的な変化があります。顧客の期待値の変化、競争環境の激化、技術革新のスピード向上などが、企業に変革を迫っています。

顧客の期待値の変化

デジタルネイティブな顧客が増加し、即時性、パーソナライゼーション、シームレスな体験が当たり前の基準となっています。たとえば、ECサイトでは即日配送、レコメンデーション、ワンクリック購入が標準となり、これらを提供できない企業は競争力を失います。新規事業においても、こうしたデジタル体験を前提とした設計が不可欠です。

既存ビジネスモデルの限界

多くの業界で、従来の売り切り型モデルから継続的な関係性を構築するサブスクリプション型やサービス型へのシフトが進んでいます。この転換には、顧客データの収集・分析、デジタルプラットフォームの構築、継続的な価値提供の仕組みが必要であり、DXが不可欠です。

競合の多様化

業界の境界が曖昧になり、異業種からの参入や、デジタル企業との競争が激化しています。従来の競合だけでなく、テクノロジー企業やスタートアップが、デジタル技術を武器に市場に参入してきます。既存企業が競争力を維持するには、同様にデジタルを活用した新しい事業の創出が求められます。

技術革新の加速

AI、IoT、クラウド、5Gなどのデジタル技術が急速に進化し、新しいビジネス機会を生み出しています。これらの技術を活用することで、従来は実現困難だったサービスが可能になります。たとえば、AIによる画像認識を活用した品質検査の自動化、IoTによる遠隔監視サービス、ブロックチェーンを活用したトレーサビリティ(追跡可能性)の確保などです。

企業の持続的成長の必要性

既存事業が成熟し成長が鈍化する中、新たな収益源の確保が経営課題となっています。DXを前提とした新規事業は、既存アセットを活用しながら新しい市場を開拓できるため、効率的な成長戦略として注目されています。

これらの理由から、DX起点の新規事業開発は、単なる選択肢ではなく、企業の生存と成長に不可欠な取り組みとなっています。

DXを前提とした新規事業開発を成功させる5つの立ち上げ手順

DXを前提とした新規事業を成功させるには、段階的なプロセスを踏み、各段階で適切な検証と判断を行うことが重要です。

1.機会発見とアイディエーション(既存アセット×デジタル)

新規事業開発の出発点は、事業機会の発見とアイデアの創出です。DXを前提とした新規事業では、既存の強みやアセットとデジタル技術を掛け合わせることで、独自性のある事業機会を見出すことができます。

活用できる既存アセット

  • 顧客基盤、製品技術、業界知識
  • 生産設備、流通網、ブランド力
  • 蓄積データ

これらの中からデジタル技術と組み合わせることで新しい価値を生み出せる要素を特定します。たとえば、製造業であれば、長年蓄積した製造ノウハウとIoTを組み合わせて、顧客の生産プロセスを最適化するコンサルティングサービスを提供できる可能性があります。

機会発見のプロセスでは、市場トレンドの分析、顧客の未解決課題の探索、競合の動向調査などを行います。とくに重要なのは、顧客が日常的に抱えている「不」(不満、不便、不安、不足)を発見することです。これらの課題の中で、デジタル技術によって解決できるものを優先的に選定します。

アイディエーションでは、社内の異なる部署のメンバー、外部の専門家、実際の顧客を巻き込んだワークショップを開催し、幅広いアイデアを収集します。この段階では、実現可能性よりも量を重視し、後から絞り込みます。

絞り込みの基準は、顧客価値の大きさ、市場規模、自社の強みとの適合性、技術的実現可能性、収益性などです。これらを評価するフレームワークとして、リーンキャンバスや事業機会マトリクスなどを活用できます。

2.顧客検証と課題の特定(Problem-Solution Fit)

有望なアイデアを絞り込んだら、そのアイデアが本当に顧客の課題を解決するかを検証します。この段階の目的は、Problem-Solution Fit(課題と解決策の適合)を確認することです。

顧客検証では、想定するターゲット顧客に直接インタビューを行い、顧客が実際に抱えている課題や不満を深く理解することが重要です。以下のような質問を通じて、顧客の行動や感情を掘り下げます。

  • 「現在どのような方法でこの作業を行っていますか」
  • 「その過程でどんな困難がありますか」
  • 「理想的にはどうなっていれば良いですか」

インタビューで重要なのは、顧客が言語化している表面的なニーズだけでなく、潜在的な課題を発見することです。顧客自身も解決策が分からず、現状を当たり前だと思っている場合があります。行動の観察や「なぜ」を繰り返す質問により、根本的な課題を明らかにしていきましょう。

顧客検証を通じて、当初の仮説が正しいか、修正が必要なのかを判断します。多くの場合、想定していた課題が実は重要ではなかったり、別の課題の方が深刻だったりすることが判明するため、この段階で柔軟に仮説を修正することが後の成功につながります。

Problem-Solution Fitが確認できたら、その課題を解決する最小限の機能を定義します。デジタル技術を活用してどのように解決するか、どの機能が最も重要かを明確にすることが、次のMVP開発の基礎となります。

3.MVP開発による最小限の価値提供

課題と解決策の適合が確認できたら、MVP(Minimum Viable Product、実用最小限の製品)を開発します。MVPの目的は、最小限のコストと時間で、顧客に実際の価値を提供し、反応を確認することです。

DXを前提としたMVPでは、デジタル技術を活用した具体的な体験を提供します。ただし、完璧なシステムを作る必要はなく、核となる価値を体験してもらえる最小限の機能に絞り込むことがポイントです。たとえば、データ分析プラットフォームを開発する場合、高度なAI分析の前に、まずはデータの可視化とシンプルな集計機能だけを実装し、顧客が「データを見て判断する」という基本的な体験を得られるかを確認します。

MVP開発では既存のツールやサービスを活用して開発期間を短縮します。ノーコード・ローコードツール、クラウドサービス、APIの組み合わせなどにより、数週間から1〜2か月程度でリリースできる場合もあります。スピードを優先し、80%の完成度で市場に出すことを心がけましょう。

MVPで収集すべきデータ

  • 定量データ:使用頻度、機能別の利用率、完了率など
  • 定性フィードバック:使用感、改善要望、価値の実感度など
  • 重点チェック項目:顧客が継続的に使いたいと思うか、対価を支払う意思があるか

MVP段階での学びは、次の改善や方向転換の判断材料となります。想定通りに価値を感じてもらえた場合は、機能を拡張していきましょう。一方、期待した反応が得られない場合は、仮説を見直しピボット(方向転換)を検討します。

4.PMFの検証とピボット判断

MVPで一定の顧客獲得と使用実績が得られたら、PMF(Product Market Fit、製品と市場の適合)を検証します。PMFとは、製品が市場のニーズを満たし、顧客が自発的に利用し、推奨してくれる状態を指します。

PMF検証の主要指標

  • 定量指標:顧客獲得コスト、顧客生涯価値、継続率、Net Promoter Score(顧客推奨度)
  • 定性指標:顧客からの自然な口コミ、積極的な機能要望、競合からの切り替え

中でも重要なのは継続率です。DXを前提としたサービスでは、一度使っただけで離脱されるのではなく、継続的に利用されることが事業の成立条件となります。月次継続率や年次継続率を測定し、一定の水準(業界や事業モデルによるが、一般的には80%以上が目安)を達成できているかを確認します。

もしPMFが達成できていない場合、ピボット(方向転換)を検討しましょう。ピボットにはターゲット顧客の変更、提供する価値提案の変更、収益モデルの変更、機能の優先順位の大幅な見直しなどのパターンがあります。ピボットの判断は困難ですが、データとフィードバックに基づいて客観的に行うことが重要です。

一方、PMFの兆候が見られた場合は、次のグロースフェーズに移行します。ただし、PMFは一度達成したら終わりではなく、市場環境の変化に応じて継続的に維持・改善する必要があります。

5.グロースと自走化に向けた体制構築

PMFが確認できたら、事業をスケール(拡大)させるグロースフェーズに入ります。このフェーズでは、顧客基盤の拡大、組織体制の強化、収益化の本格化を進めることが目的です。

  • 顧客基盤の拡大
    初期の限定的な顧客から、より広範な市場へと展開します。マーケティングチャネルの多様化、営業体制の構築、パートナーシップの拡大などを通じて、効率的に顧客を獲得します。ただし、急激な拡大はサービス品質の低下やサポート体制の破綻を招くリスクがあるため、段階的に進めることが重要です。
  • 組織体制の強化
    初期の少数精鋭チームから本格的な事業組織へと移行します。カスタマーサポート、営業、マーケティング、開発、品質管理などの機能を整備し、安定的なサービス提供体制を構築します。また、既存事業との連携も強化し、企業全体の資源を活用します。
  • 収益化の本格化
    持続可能なビジネスモデルを確立することを目指します。価格設定の最適化、顧客単価の向上、コスト構造の改善などを通じて、収益性を高めます。DXを前提とした事業では、スケールによるコスト効率の向上(規模の経済)やネットワーク効果(利用者が増えるほど価値が高まる効果)を活用できる場合が多く、これらを戦略的に活かすことも有効です。

最終的な目標である自走化に向けては、事業の運営を仕組み化し属人性を減らすことが重要です。標準的なオペレーション手順の確立、データに基づく意思決定の文化の醸成、継続的な改善サイクルの構築などを通じて、創業メンバーに依存しない持続可能な組織を作りましょう。

DX起点の新規事業開発でよくある失敗事例と回避策

DXを前提とした新規事業開発には、特有の失敗パターンがあります。これらを理解し、適切な対策を講じることが成功への近道です。

手段が目的化し、ビジネスモデルが置き去りになる

DX起点の新規事業で最も多い失敗パターンは、デジタル技術の活用が目的化し、ビジネスモデルや顧客価値が置き去りになることです。「AIを使って何かできないか」「ブロックチェーンを活用したサービスを作りたい」といった技術起点の発想から始まり、顧客が本当に求めていない製品やサービスが生まれてしまいます。

この失敗の根本原因は、最新技術への興奮や先進的な取り組みのアピールが、本質的な価値創造から目を逸らせることにあります。結果として、高度なシステムは構築できたものの、顧客が使わず収益化もできないという事態に陥ります。

このような問題を回避するためには、常に顧客の課題を起点に考えることが重要です。デジタル技術はあくまで課題を解決する手段であり、目的ではありません。まず「顧客が本当に困っていることは何か」「その課題を解決できれば、対価を支払う意思があるか」を徹底的に検証し、その上でデジタル技術が最適な手段であるかを判断します。

また、事業計画の段階で明確な収益モデルとKPI(重要業績評価指標)を設定し、技術的な達成度だけでなく、顧客獲得数、収益、継続率などのビジネス指標で評価する仕組みを作ることで、手段と目的の混同を防げます。

戦略コンサルへの丸投げで現場が動かない

DXや新規事業開発の知見が社内にない場合、大手戦略コンサルティング会社に依頼して事業戦略を作成してもらうケースがあります。しかし、立派な戦略書があっても、実行段階で現場が動かず計画倒れに終わることが少なくありません。

この失敗の原因は、戦略立案と実行の分断にあります。コンサルタントは理論的には優れた戦略を描けますが、組織文化や実務上の制約を十分に理解していない場合があります。また、実行の責任を負わないため、実現可能性や現場の納得感が不足しがちです。

さらに、現場メンバーが戦略立案に関与していないと「外部が作った計画」という認識が生まれ、当事者意識が得られません。新規事業では不確実性が高く、現場の判断と柔軟な対応が必要なため、トップダウンの計画だけでは機能しません。

失敗を避けるには、戦略立案の段階から社内メンバーを深く関与させることが重要です。コンサルタントは答えを提供する役割ではなく、社内メンバーと共に考え、議論し、意思決定を支援する「伴走者」として位置づけます。また、戦略立案だけでなく初期の実行段階までサポートしてもらい、計画が実際に機能するかを検証します。

さらに、実務経験豊富なパートナー企業との協業も検討しましょう。戦略と実装を一貫して担えるパートナーであれば、絵に描いた餅で終わるリスクを大幅に減らせます。

「指示待ち」の開発会社への発注でスピード感が鈍る

DXを前提とした新規事業開発では、外部の開発会社に発注するケースがあります。しかし、従来型の受託開発会社に詳細な仕様書を渡して開発を依頼するスタイルでは、新規事業に必要なスピード感と柔軟性が失われます。

従来の受託開発は要件が明確な場合に適していますが、新規事業では何を作るべきかが最初から明確ではありません。顧客の反応を見ながら柔軟に変更する必要があるため、指示待ちの開発会社では仕様変更のたびに追加費用や期間延長が発生し、素早い仮説検証が不可能です。

また、受託型の開発会社は与えられた仕様を実装することが役割であり、ビジネスの成功には関心が薄い場合があります。そのため「仕様通りに作ったが、顧客が使わない」という事態が発生しても、開発会社の責任にはなりません。

ここでのポイントは、アジャイル開発に対応でき、ビジネスの成功にコミットする「共創型」のパートナーを選ぶことが重要です。共創型のパートナーは、単に指示を待つのではなく、ビジネスの目的や顧客の課題を理解した上で主体的に提案を行います。短いサイクルで開発と検証を繰り返すアジャイル手法に対応しており、柔軟な変更が可能です。

契約形態も、固定の納品型ではなく柔軟な準委任契約や成果に応じた報酬体系を検討しましょう。これにより、開発会社もビジネスの成功に利害を持ち、より積極的に価値創造に貢献するインセンティブが生まれます。

DXを前提とした新規事業を実現する理想的な組織体制と人材

DXを前提とした新規事業を成功させるには、適切な役割分担と、デジタルとビジネスの両方を理解できる人材が不可欠です。

DX新規事業に必要な3つの役割

DXを前提とした新規事業開発では、最低限3つの役割を明確に定義し、適切な人材を配置することが重要です。

ビジネスプロデューサー(事業責任者)

ビジネスプロデューサーは、新規事業全体の方向性を定め、最終的な意思決定を行う役割です。経営層との調整、予算確保、社内の理解獲得、重要な判断などを担当します。DX起点の新規事業では、デジタル技術の基本的な理解と、それがビジネスにどう貢献するかを説明できる能力が求められます。

この役割には、事業への強いコミットメントと、組織内での影響力が必要です。また、不確実性の高い状況でも判断を下せる決断力と、チームを牽引するリーダーシップが求められます。DXに関する専門的な知識がなくても、専門家の意見を理解し、ビジネス判断に活かせる能力があれば務まるでしょう。

プロダクトマネージャー(PM):ビジネスと技術の橋渡し

プロダクトマネージャーは、顧客のニーズとビジネス目標を理解し、それを実現する製品やサービスの方向性を定める役割です。ビジネスの要求と技術の可能性を橋渡しし、両者の最適なバランスを見出します。

PMの主な責務は、ユーザーリサーチ、機能の優先順位付け、開発チームとの連携、成果指標の設定と測定などです。顧客視点でサービスの価値を定義しつつ、技術的な制約やコストも考慮した現実的な判断を行います。また、エンジニアやデザイナーと効果的にコミュニケーションを取り、ビジネスの意図を正確に伝える能力も必要です。

DXを前提とした新規事業では、PMがデジタル技術の基本を理解していることが望ましいとされており、AI、クラウド、API、データベースなどの基礎知識があれば、エンジニアとの対話もスムーズになり、技術的な可能性や制約を踏まえた判断ができます。

エンジニア・デザイナー:ユーザー体験を具現化する

エンジニアとデザイナーは、アイデアを実際の製品やサービスとして形にする役割です。DXを前提とした新規事業では、これらの専門家が単なる実装者ではなく、価値創造のパートナーとして位置づけられます。

エンジニアは、技術的な実現可能性を判断し、システムやプロダクトを構築する役割を担います。新規事業では完成度よりもスピードが重視されるため、MVPを素早く開発し、顧客のフィードバックを基に柔軟に改善できる能力が必要です。また、クラウドサービスやAPIを活用して、短期間で価値を提供できる設計力も求められます。

デザイナーには、ユーザー体験(UX)を設計し、使いやすく魅力的なインターフェースを提供することが求められます。DX起点のサービスでは、デジタルが顧客との主要な接点となるため、直感的でわかりやすいデザインが事業の成否を左右します。デザイナーは、ユーザー調査の結果を基に、顧客の課題を解決する体験を設計し、プロトタイプを通じて検証を繰り返します。

これらの役割は、一人が複数を兼務することもありますが、機能としては明確に存在する必要があります。とくに初期段階では3〜5名程度の少数精鋭チームを編成し、密接に協働できる体制を構築します。

外部パートナーを「チームの一員」として組み込むメリット

社内にデジタル人材やプロダクト開発の経験が不足している場合、外部パートナーを「チームの一員」として組み込むことで、効果的に事業を推進できます。

外部パートナー活用の主なメリット

  • 専門知識と経験を即座に活用できる
  • 必要なタイミングで必要なスキルを持つ人材を確保できる
  • 複数のプロジェクトで培った知見やベストプラクティスを活用でき、試行錯誤の時間を短縮できる

ただし、単なる発注者と受注者の関係ではなく、真の意味でのチームとして機能させるには、以下の条件が必要です。

  • 情報の透明性
    事業の背景、目標、課題、制約などを包み隠さず共有し、外部パートナーが文脈を理解した上で判断できる環境を作る
  • 定期的かつ密接なコミュニケーション
    週次や隔週でのミーティング、チャットツールでのリアルタイムな対話、共同作業の機会などを通じて、内部メンバーと外部パートナーが一体となって議論し意思決定する
  • 共通の目標と評価基準
    納品物の完成ではなく事業の成功を共通のゴールとし、顧客獲得や収益といったビジネス指標で評価する
  • 適切な権限委譲
    細かい指示や承認プロセスで動きを鈍らせるのではなく、一定の範囲内で外部パートナーが自律的に判断できる権限を与える

外部パートナーをチームの一員として組み込むことで、社内リソースの制約を乗り越え、DX起点の新規事業を加速させることが可能です。

失敗しないDX・新規事業開発パートナーの選び方

外部パートナーの選定は、DX起点の新規事業開発の成否を大きく左右します。以下のポイントを重視して選ぶことが重要です。

戦略と開発を分断させない一気通貫型であるか

DXを前提とした新規事業開発では、事業戦略の立案と技術開発が密接に関連しています。戦略だけを提案して開発は別の業者に任せる、あるいは開発だけを担当して事業の文脈を理解しないといった分断が発生すると、品質や一貫性が損なわれます。

一気通貫型のパートナーは、事業戦略の立案から、プロダクト設計、技術開発、運用支援まで、すべてのフェーズを一貫して担える体制を持っています。ビジネスコンサルタント、プロダクトマネージャー、エンジニア、デザイナーなど、多様な専門家が社内にいて、チームとして協働できることが理想的です。

一気通貫の支援により、各フェーズ間の引き継ぎがスムーズになり、情報の損失や認識のズレが最小化されます。企画段階での議論や決定事項が、開発チームにも正確に伝わり、一貫性のあるサービスが実現します。また、実装段階で技術的な制約が明らかになった場合、戦略を修正する必要がありますが、一気通貫型のパートナーであれば、この往復を円滑に行えます。

パートナーの一気通貫能力を見極めるには、過去のプロジェクトで、企画から実装、運用まで一貫して関わった事例があるかを確認することを推奨します。また、社内にどのような専門家がいるか、各フェーズで必要な機能をどう提供できるかを具体的に確認しましょう。

ビジネスモデルまで踏み込んで議論できるか

優れたパートナーは、単に技術的な実装を行うだけでなく、ビジネスモデルの妥当性や収益化の方法についても議論できる視点を持っています。DXを前提とした新規事業では、技術とビジネスが不可分であり、両方を理解したパートナーが価値を発揮します。

ビジネスモデルまで踏み込めるパートナーは、初回の打ち合わせから、「この事業で収益をどう得るのか」「顧客獲得コストと顧客生涯価値のバランスは取れているか」「スケールする仕組みがあるか」といった本質的な問いを投げかけます。技術的にどう実装するかだけでなく、そもそもビジネスとして成立するかを共に考える姿勢があります。

また、類似事例や市場動向を踏まえて、より効果的なビジネスモデルを提案できることも重要です。たとえば、当初は売り切り型を想定していたが、サブスクリプション型の方が顧客にとって導入しやすく、継続的な収益も見込めるといった提案ができるパートナーは、事業の成功確率を高めます。

さらに、事業がうまくいかない場合に「ピボット(方向転換)」や「撤退」の判断基準を客観的なデータに基づいて提言してくれるかどうかも、信頼できるパートナーの条件です。無理な延命を提案するのではなく、貴社の資源を守る視点を持っているかを確認しましょう。

パートナーのビジネス理解度を見極めるには、初回の対話で、事業の背景や目的について深く質問してくるか、ビジネスモデルに関する提案や懸念点を示せるかを確認します。技術的な話に終始するのではなく、ビジネスの成功を共に考える姿勢があるかが重要です。

アジャイルに仮説検証を回せる契約・体制か

DXを前提とした新規事業開発では、当初の計画通りに進むことは稀であり、顧客の反応を見ながら柔軟に方向修正する必要があります。そのため、アジャイルな仮説検証のサイクルを回せる契約形態と開発体制が不可欠です。

従来の受託開発では、詳細な仕様書を作成し、それに基づいて固定の納品物と期間、費用を契約します。しかし、新規事業では仕様が流動的であり、固定契約では柔軟な変更ができません。そのため、アジャイル開発に対応した柔軟な契約形態が必要です。

アジャイルに対応できるパートナーは、短いサイクル(2〜4週間程度のスプリント)で開発と検証を繰り返す体制を提案します。各スプリントで、優先度の高い機能を開発し、顧客に提供してフィードバックを得て、次のスプリントの計画に反映させるのです。このサイクルを回すことで、顧客の期待と製品の方向性のズレを早期に修正できます。

また、契約形態としては、準委任契約やタイムアンドマテリアル契約(時間と材料に基づく契約)が適しています。これにより、仕様の変更や優先順位の調整を柔軟に行うことができます。また、成果に応じた報酬体系や、事業の成功に連動したインセンティブを設定することで、パートナーも事業の成功に利害を持ち、より積極的に貢献するようになります。

パートナーのアジャイル対応能力を見極めるには、過去のプロジェクトで、計画から方向転換した事例や、顧客のフィードバックを基に大きく改善した経験があるかを確認します。また、契約の柔軟性についても、初期の段階で率直に相談し、アジャイルな進め方に対応できるかを確認しましょう。

DXを前提とした新規事業開発に関するよくある質問(FAQ)

DXを前提とした新規事業開発に関して、よく聞かれる質問とその回答を紹介します。

社内にIT知識がまったくなくても大丈夫ですか?

社内にIT知識やデジタル人材がほとんどいない場合でも、DXを前提とした新規事業開発は可能です。多くの企業が同様の状況からスタートしており、外部パートナーとの協業や段階的な知識習得によって事業を推進しています。

重要なのは、社内に最低限のコアメンバー(事業責任者とビジネス側の意思決定者)を確保し、技術開発やデジタル実装などの専門領域は外部パートナーに委託する体制を構築することです。社内メンバーは、技術の詳細を理解している必要はありませんが、顧客のニーズを理解し、事業の方向性を定め、外部パートナーと効果的にコミュニケーションできる能力が求められます。

また、外部パートナーとの協業を通じて、社内メンバーが徐々にデジタル知識を習得することも可能です。開発プロセスに参加し、技術的な判断の背景を学ぶことで、基礎的な理解が深まります。プロジェクトを進めながら、必要な知識を実践的に学ぶアプローチが効果的です。

長期的には、事業がある程度の規模になった段階で、社内にデジタル人材を採用することを検討しましょう。事業の方向性が固まり、継続的な開発ニーズが明確になった時点が採用の適切なタイミングです。初期段階から大規模な採用を行うよりも、段階的に体制を強化する方が、リスクを抑えられます。

予算や期間はどれくらいを見込むべきですか?

DXを前提とした新規事業開発の予算と期間は、事業の性質や目指す規模によって大きく異なりますが、段階的なアプローチを取ることで、初期投資を抑えつつリスクを管理できます。

初期の仮説検証フェーズ(1〜3か月)

顧客インタビュー、市場調査、簡易的なプロトタイプ作成などを行うこのフェーズでは、300万円〜1,000万円程度が一般的な目安です。この段階では、大規模な開発は行わず、アイデアの妥当性と顧客ニーズを確認することに集中します。

MVP開発とPoC(2〜4か月)

実際に動くMVPを開発し、限定的な顧客に提供して検証するフェーズでは、300万円〜3,000万円程度が目安です。ノーコードツールを活用してコストを抑える場合と、本格的なシステム基盤を作る場合で幅がありますが、まずは小さく始めることが鉄則です。

本格開発とPMF検証(4〜12か月)

MVPで得られたフィードバックを基に、本格的な製品を開発し、PMFを目指すフェーズでは、3,000万円〜1億円程度の投資が必要になる場合があります。この段階には、開発チームの拡充、インフラの強化、マーケティングの本格化などが含まれます。

重要なのは、最初から大規模な予算を投入するのではなく、段階的に投資を拡大するアプローチです。まずは小規模な予算で仮説検証を行い、成果が見えた段階で次のフェーズへの投資を判断します。このアプローチにより、リスクを抑えながら、有望な事業に集中投資できます。

また、助成金や補助金の活用も検討できます。事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金など、DXや新規事業に関連する支援制度があり、これらを活用することで、自己負担を軽減できるでしょう。

既存の基幹システムとの連携も考慮した開発は可能ですか?

既存の基幹システム(ERP、CRM、生産管理システムなど)との連携を考慮した開発は可能であり、むしろDXを前提とした新規事業では、既存システムとの連携が重要な成功要因となる場合が多くあります。

基幹システムとの連携により、既存の顧客データ、在庫情報、取引履歴などを新規事業で活用でき、より価値の高いサービスを提供できます。たとえば、既存の顧客管理システムから顧客情報を取得し、パーソナライズされたサービスを提供する、在庫管理システムと連携して最適な配送を提案するといったことが可能になります。

連携の方法は、既存システムの構成や技術によって異なります。基本的なアプローチは、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じたデータ連携です。既存システムがAPIを提供していれば、そのAPIを通じてデータを取得または送信します。APIがない場合は、データベースから直接読み取る、またはCSVなどのファイル連携を行う方法があります。

連携の設計では、既存システムへの影響を最小限に抑えることが重要です。既存システムを大幅に改修すると、リスクやコストが増大するため、新規システム側で柔軟に対応できる設計を心がけます。また、初期段階では最小限の連携にとどめ、事業が拡大した段階で本格的な統合を検討するアプローチも有効です。

技術的な判断には専門知識が必要なため、既存システムの構成を理解し、適切な連携方式を提案できる経験豊富な外部パートナーを選ぶことも重要です。パートナー選定の際には、既存システムとの連携実績があるかを確認しましょう。

まとめ:DXを前提とした新規事業開発の成功には「実務に強いパートナー」が不可欠

DXを前提とした新規事業開発は、企業の持続的な成長に不可欠ですが、既存事業とは異なるアプローチと専門知識が必要です。

成功のポイントは、デジタル技術の活用とビジネスモデルの設計を同時に進めることです。機会発見、顧客検証、MVP開発、PMF検証、グロースと自走化という段階的なプロセスを踏むことで、失敗のリスクを最小化できます。

また、手段の目的化、戦略の丸投げ、指示待ちの開発会社への発注といった典型的な失敗パターンを避け、顧客起点の発想、社内メンバーの関与、共創型パートナーの選定が重要です。

組織体制では、ビジネスプロデューサー、プロダクトマネージャー、エンジニア・デザイナーという3つの役割を明確にし、外部パートナーをチームの一員として組み込むことで、社内リソースの制約を乗り越えられます。パートナー選定では、戦略と開発の一気通貫、ビジネスモデルへの踏み込み、アジャイルな仮説検証体制を重視しましょう。

Incubation Base株式会社は、DXを前提とした新規事業の立ち上げを伴走型で支援しています。事業戦略の策定から顧客検証、MVP開発、本格的なシステム実装、運用改善まで、新規事業の各段階で必要なサポートを一気通貫で提供します。

「社内にIT人材やプロダクト開発の経験が不足している」「既存の基幹システムとの連携を考慮した開発が必要、アジャイルに仮説検証を回したい」このような課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。ビジネス設計からデジタル実装まで、実務に強い経験豊富なチームが、貴社の新規事業を成功へと導きます。

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