社内での新規事業立ち上げは、企業が持続的に成長していくうえで欠かせない要素です。多くの企業が取り組みを強化している一方、「成功させるために何が必要かわからない」「リソース配分に悩んでいる」という担当者の方も多いでしょう。
本記事では、社内における新規事業立ち上げの基本的な流れと、成功率を高めるための重要ポイントを解説します。
- 社内事業を新規立ち上げする目的とメリット
- 社内新規事業を立ち上げる際の基本的なフロー(手順)
- 社内新規事業立ち上げの際にありがちな失敗要因
- 社内新規事業立ち上げを成功させるためのポイント
そもそも社内での新規事業立ち上げとは?定義と仕組み

社内での新規事業立ち上げ(社内起業)とは、既存企業に所属した状態で、社内のリソースを活用して新しいビジネスを創出することを指します。
通常、独立して起業する場合はゼロからのスタートになりますが、社内での立ち上げであれば、企業のブランド力、資金、人材などのリソースを活用可能です。迅速な事業展開が可能であり、事業転換(ピボット)を図る際の手段としても有効です。
近年では、従業員のモチベーション向上や「社内起業家(イントレプレナー)」の育成を目的に、制度化する企業も増えています。
社内起業と子会社化・カーブアウトの違い
社内での立ち上げと混同されやすい形態に「子会社化」や「カーブアウト(事業の切り出し)」がありますが、両者は**「リスクとリソースの持ち方」**が異なります。
- 子会社化・カーブアウト: 親会社とは別の法人格を持ちます。独自の採用や資金調達が可能になり経営の自由度は高まりますが、独立した企業としての責任とリスク管理が求められます。
- 社内起業(社内プロジェクト): あくまで「社内の一事業」としてスタートします。既存オフィスの利用や他部署との連携など、自社のリソースをフル活用できるのが最大のメリットです。従業員個人が資金面でのリスクを負うことなく、スピーディーに事業検証を行えます。
なお、社内で立ち上げた新規事業が軌道に乗ったタイミングで、カーブアウト(分社化)するケースも一般的です。
立ち上げのパターン:トップダウン・ボトムアップ・ハイブリッド型
社内で新規事業を立ち上げるアプローチには、大きく分けて3つの型があります。
- トップダウン型:経営陣主導で事業を立ち上げる方法です。全社戦略と直結するため、豊富なリソース投下や迅速な意思決定が期待できます。
- ボトムアップ型:社員からの提案(社内ビジネスコンテスト等)をきっかけにする方法です。現場の「気づき」を形にできるため、社員のエンゲージメント向上や人材育成に寄与します。
- ハイブリッド型(領域指定型):経営陣が「解決したい領域やテーマ」を示し、具体的なアイデアを現場が提案するスタイルです。トップダウンの「戦略性」とボトムアップの「現場視点」を組み合わせることで、実現可能性の高い事業が生まれやすくなります。
企業が社内で新規事業を立ち上げる目的

なぜ今、多くの企業が社内での新規事業立ち上げに注力しているのでしょうか。成功に導くには、その背景にある目的を理解する必要があります。
従業員が積極的にチャレンジできる環境の構築
ビッグデータやAI(人工知能)など技術の急速な発展により、市場環境は絶えず変化しています。既存の主力事業のみに依存していると、市場の変化に対応できず陳腐化するリスクがあります。
社内で新規事業を立ち上げるプロセスは、常に変化するマーケットに柔軟に対応し、従業員が新たな領域へチャレンジする機会を創出します。これにより、組織全体の停滞を防ぐ効果が期待できます。
人材育成を通した潜在能力の発掘
企業の成長には人材育成が不可欠です。既存事業のオペレーションを回すだけでは、経営者視点で事業を考案・実行できる人材は育ちにくいのが現状です。
社内新規事業の立ち上げメンバーは、PL(損益計算書)責任を含めた重圧を担います。この経験は、従業員の発想力やリーダーシップなどの潜在能力を引き出し、次世代のリーダー育成に直結します。
社内新規事業の立ち上げ方|5つのステップ

社内で新規事業を立ち上げる際の、基本的なフローを5つのステップで解説します。
1. 新規事業のアイデア創出・公募
まずはビジョンや目的に沿ってアイデアを創出します。以下の視点を持つことが重要です。
- 既存周辺領域の探索: 社内リソースの棚卸しを行い、自社の強み(技術、顧客基盤、販路)を活かせる領域を探します。ただし、既存事業の延長線上にとらわれすぎないよう注意が必要です。
- 新規領域の探索: 先行事例や海外のトレンドを分析し、市場機会(ホワイトスペース)を探ります。「なぜ自社がやるのか」という意義付けが重要になります。
社内ビジネスプランコンテストの活用
広くアイデアを募る場合、ビジコン形式も有効です。ただし、単なるイベントで終わらせないために以下の設計が必要です。
- 審査員に外部有識者を招く:社内の常識にとらわれない客観的な評価を行うため。
- 出口戦略を明確にする:「入賞すれば事業化予算がつくのか」「提案者が責任者になるのか」を事前に示し、参加者の本気度を高める。
2. 市場性や事業性の見極め
アイデアが出たら、以下の要素を調査し、市場性・事業性を客観的に評価します。
- ターゲット顧客の規模や抱えている課題(Pain)
- 既存の競合や代替品の有無
- 技術的・法的制約
- 初期コストと回収見込み
「本当に収益化できるか」という視点で厳しく見極め、問題があればピボット(方向転換)を検討します。
3. 担当者の決定やプロジェクトチームの結成
事業の方向性が決まり次第、推進チームを結成します。 初期段階ではリスクを抑えるため、部署を新設せずプロジェクトチームとして「スモールスタート」するのが一般的です。社内に適任者がいない場合は、外部人材の登用やコンサルタントの活用も検討してください。
4. 企画書の策定と予算計画
具体的な事業計画書(企画書)を作成します。ここで重要なのは、アイデアの中身だけでなく**「権限と予算」の設計**です。
- 決裁権限の範囲(どこまで現場で決めて良いか)
- コミュニケーションフロー
- 必要なリソース(ヒト・モノ・カネ)の調達計画
これらを明確にしておくことで、立ち上げ後のスピードダウンを防げます。
5. PoC(実証実験)の実施と仮説検証

計画が整ったら、PoC(Proof of Concept)を実施します。ここでの目的は売上ではなく、「想定した顧客の課題やニーズが本当に存在するか」の検証です。
顧客の反応(定性・定量データ)をもとに、仮説が正しければ本格投資(スケール)へ、反応が薄ければ計画修正を行います。このサイクルを高速で回すことが、社内新規事業立ち上げの鉄則です。
社内新規事業の立ち上げが失敗する主な要因

社内での新規事業立ち上げは、既存事業に比べて不確実性が高く、失敗もつきものです。ここでは代表的な失敗パターンを解説します。
兼務によるリソース不足で実行スピードが低下する
最も多い失敗要因が「兼務」による弊害です。 「既存業務8割、新規事業2割」といった兼務体制では、どうしても緊急度の高い既存業務が優先され、新規事業の検討が進みません。変化の早い市場において、スピード不足は致命傷となります。可能な限り専任担当者を配置するか、業務時間を明確に確保する仕組みが必要です。
専門人材や推進ノウハウ不足による迷走
新規事業には、既存事業とは異なる「0→1(ゼロイチ)」のスキルが求められます。 社内にノウハウがないまま進めると、調査や検証の手法が分からずプロジェクトが迷走します。必要に応じて、新規事業立ち上げ経験のある人材の採用や、外部パートナーによる支援を取り入れるべきです。
全社戦略との不整合(カニバリゼーション等)
全社戦略を無視した事業テーマは、以下のような問題を引き起こします。
- 「なぜやるのか」が不明確で、経営陣からの投資が止まる
- 既存事業と顧客を取り合い(カニバリゼーション)、社内で対立する
- 評価軸が定まらず、担当者のモチベーションが下がる
社内で新規事業を立ち上げる際は、必ず企業のミッションや中長期戦略との整合性を確認してください。
社内新規事業立ち上げを成功させるポイント

社内での新規事業立ち上げを成功確率を高めるために、以下のポイントをおさえましょう。
全社でバックアップし挑戦しやすい風土を作る
新規事業は「異物」として社内で孤立しがちです。経営陣がコミットし、「この事業は会社の未来を作るものだ」というメッセージを全社に発信し続ける必要があります。失敗を許容し、挑戦を称賛する組織風土の醸成が不可欠です。
撤退ラインをあらかじめ決めておく(撤退基準)
ズルズルと赤字事業を続けることは、会社全体の体力を奪います。 「〇ヶ月以内にこのKPIを達成できなければ撤退・凍結する」といった撤退ライン(撤退基準)を事前に設定しましょう。撤退基準が明確であれば、担当者も「期間内に結果を出す」という健全な危機感を持って取り組めます。
外部の専門家の力を借りることも視野に入れる
社内に知見がない場合、すべて自前でやろうとすると時間がかかりすぎます。 新規事業立ち上げのコンサルティング会社や、開発力のあるパートナー企業など、外部の専門家を積極的に活用しましょう。特に「開発もできるパートナー」であれば、アイデアを形にするスピードが格段に上がります。
社内新規事業立ち上げの際によくある質問(FAQ)
社内での新規事業立ち上げに関して、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- 具体的な事業内容が決まらない場合はどうすればいいですか?
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ターゲット顧客への徹底的なヒアリング(インタビュー)が有効です。机上の空論で考えるのではなく、顧客が抱える「不(不安、不満、不便)」を探ることから始めましょう。また、異業種の成功事例を抽象化して自社に転用する「アナロジー思考」も役立ちます。
- 新規事業の部署名やサービス名の決め方は?
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わかりやすさと独自性のバランスが重要です。以下の要素を検討してください。
- 事業コンセプトを体現しているか
- 競合と被っていないか(商標調査含む)
- 発音しやすく、覚えやすいか 社内公募でアイデアを募るのも、社内の関心を高める良い方法です。
- 立ち上げた事業の成果が想定より下回った場合の対処法は?
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まずは原因分析を行います。「商品そのものが悪いのか」「集客が足りないのか」「売り方が悪いのか」を切り分けます。 初期段階であれば、ビジネスモデル自体を修正する「ピボット」も躊躇すべきではありません。小さな失敗(ピボット)を繰り返し、正解に近づけていくプロセスこそが新規事業です。
社内新規事業の立ち上げを成功させ、自社の成長を加速させよう
社内での新規事業立ち上げは、企業の収益源を増やすだけでなく、組織の活性化や人材育成にも寄与する重要なプロジェクトです。 成功のためには、トップダウンとボトムアップの適切な組み合わせ、そして「失敗を前提とした高速な仮説検証」が鍵となります。
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