新規事業の立ち上げは、企業の将来を左右する重要なプロジェクトです。しかし、現場の担当者からは「新規事業の立ち上げがきつい」「開発プロセスがしんどい」といった悲痛な声が少なくありません。
既存事業とは異なる不確実性の中で、想定外の課題や社内の無理解に直面し、深い悩みを抱えることは、新規事業開発において珍しいことではないのです。
本記事では、多くの担当者が新規事業立ち上げをきついと感じる根本的な原因を整理し、その悩みを解消するための具体的な対処法や予防策を解説します。
- 新規事業立ち上げで「きつい」「しんどい」と感じる8つの主な原因
- 開発の悩みを解消し、負担を軽減する7つの対処法
- 立ち上げ前に準備しておくべき5つの予防策
- 新規事業開発における専門家活用の重要性
新規事業立ち上げ・開発が「しんどい」と感じるのは珍しくない

結論から言えば、新規事業の立ち上げや開発を「しんどい」と感じるのは、担当者の能力不足ではありません。構造的な要因によるものが大半です。
既存事業とは異なり、ゼロからビジネスモデルや業務フローを構築する必要があるため、業務範囲は必然的に広くなります。調査、企画、開発、営業まで幅広い役割を少人数(あるいは一人)で担うケースも多く、新規事業開発特有のマルチタスクが発生します。
さらに、「正解がない」「短期間では結果が出にくい」という特性上、周囲からの理解が得られず孤立感を深めたり、成果が見えないプレッシャーで精神的に追い詰められたりすることもあります。こうした「きつい」状況は、多くの新規事業担当者が共通して抱える悩みなのです。
新規事業開発によくある悩みとは?立ち上げがきつい主な原因

新規事業の立ち上げがきついと感じる背景には、複数の要因が絡み合っています。業務の性質上、既存事業では起こりにくい課題に直面するケースが多いのです。
- 部署からの協力や理解の不足
- 短期的な黒字化要求や時間軸への理解不足
- 担当者の知識不足や経験不足
- 不明確な目的や目標設定
- 責任感に起因する過度なプレッシャー
- 多忙による業務量のキャパシティオーバー
- 未経験かつ複雑な業務の多さ
- 成果や成功イメージの不明瞭さ
ここでは新規事業開発でよくある悩みとして、8つの主な原因を取り上げます。
部署からの協力や理解の不足
新規事業は成果が出るまで時間がかかるため、既存事業を担当する部署から理解を得にくい傾向があります。「既存事業で稼いだ利益を使っている」という目で見られ、協力を依頼しても後回しにされる場合があるのです。
具体的には以下のような状況が発生します。
- 他部署への依頼がたらい回しにされる
- 協力を求めても優先度を下げられる
- 新規事業の意義を繰り返し説明する必要がある
- 既存業務との調整で気を遣う場面が増える
関係部署との調整に多くの時間を割かれると、本来進めるべき開発作業が滞ってしまいます。根回しや説明に追われる日々が続けば、担当者は疲弊していきます。
経営層からの明確な支援がなければ、部署間の協力体制を構築するのは困難です。社内での立ち位置が曖昧なまま進めると、孤立感が強まっていきます。
短期的な黒字化要求や時間軸への理解不足
新規事業は通常、収益化までに数年単位の時間を要します。しかし経営層や関係者が短期的な成果を求めてくると、現場は板挟みになってしまいます。
既存事業と同じ評価軸で判断されると、新規事業の進捗が遅いと見なされがちです。時間軸への理解が不足していると、適切な投資判断ができず、中途半端な状態で予算が打ち切られる可能性もあります。
担当者は「早く結果を出さなければ」という焦りを抱えながら業務を進めることになり、精神的な負担が増大します。新規事業特有の時間軸を関係者全員で共有できていない状況は、大きなストレス要因となるのです。
担当者の知識不足や経験不足
新規事業では、既存業務では必要とされなかった知識やスキルが求められます。マーケティング、財務、法務、システム開発など、多岐にわたる領域への理解が必要になるケースが多いのです。
担当者がこれらの分野に不慣れな場合、以下のような課題に直面します。
- プロダクトの仕様は固まったが要件定義の進め方が分からない
- 施策のイメージはあるが実行手順が具体化できない
- 専門用語や業界慣習への理解が不足している
- 社内に相談できる経験者がいない
時間的な制約もあるなかで、必要な知識を独学で身につけるのは容易ではありません。スキル不足を自覚しながら進めざるを得ない状況は、自信の喪失にもつながります。
不明確な目的や目標設定
新規事業の目的や目標が曖昧なまま進めると、チーム内で方向性が定まりません。「何のためにやっているのか」が明確でないと、判断基準も共有できず、意思決定のたびに議論が紛糾します。
目標が数値化されていなければ、進捗の良し悪しも判断できません。関係者間で認識のズレが生じやすく、途中で方針転換を求められることもあります。
明確なゴールがない状態では、担当者は常に不安を抱えながら業務を進めることになります。振り出しに戻るような事態が繰り返されれば、モチベーションの維持は困難です。
責任感に起因する過度なプレッシャー
新規事業への期待が大きいほど、担当者が感じる責任も重くなります。「会社の将来がかかっている」「失敗は許されない」という思いがプレッシャーとなり、心理的な負担が増大します。
既存事業の担当者から冷ややかな目で見られることもあり、周囲の視線を気にしながら業務を進める状況は精神的に厳しいものです。
責任感の強い人ほど、自分一人で抱え込んでしまう傾向があります。適度に力を抜くことができず、常に緊張状態が続けば、心身の健康にも影響が出てしまいます。
多忙による業務量のキャパシティオーバー
新規事業の立ち上げでは、上流から下流まで幅広い業務を担当する必要があります。市場調査、企画立案、要件定義、開発、営業活動など、通常であれば複数人で分担する作業を少人数で進めるケースも少なくありません。
人員不足の状態では、一人あたりの業務量が膨大になります。優先順位をつけて取り組んでも、やるべきことが山積みで終わりが見えない状況に陥りがちです。
長時間労働が常態化すれば、心身ともに疲弊していきます。休息を取る時間もないまま走り続ける状態では、いずれ限界を迎えてしまいます。
未経験かつ複雑な業務の多さ
新規事業では、これまで経験したことのない業務に取り組む機会が増えます。既存事業のように確立された手順やマニュアルが存在しないため、試行錯誤を繰り返しながら進める必要があるのです。
業務内容が複雑であればあるほど、理解と習得に時間がかかります。複数の未経験業務を同時並行で進めなければならない状況では、どれも中途半端になってしまう可能性があります。
学習しながら実践する日々が続くと、精神的な余裕がなくなっていきます。成長の実感を得られないまま業務に追われる状態は、大きなストレス要因となります。
成果や成功イメージの不明瞭さ
新規事業は短期間で明確な成果が出にくい性質があります。数か月経っても目に見える結果が得られないと、「本当に意味があるのか」という疑念が生じます。
周囲からも「いつ成果が出るのか」と問われる機会が増え、説明に苦慮する場面も多くなります。成功のイメージが共有されていなければ、小さな進歩があっても評価されません。
達成感を得られないまま時間だけが過ぎていく状況では、モチベーションを維持するのは困難です。「続ける意味があるのか」と自問自答する日々が続けば、心が折れてしまうこともあります。
新規事業立ち上げがきついと感じてしまったときの主な対処法

新規事業開発で「しんどい」と感じたとき、精神論で乗り切ろうとするのは危険です。以下のような具体的な対処法を講じ、構造的に負担を減らす必要があります。
- 社長直属の部署での事業推進
- 業務内容の整理と優先順位付け
- 他部署への協力要請と連携強化
- 複雑な業務のアウトソーシング
- コンサルタントやメンターの導入
- 人事評価制度の見直し
- 具体的かつ短期的な目標の設定
ここでは実践できる7つの具体的な対処法を紹介します。
社長直属の部署での事業推進
新規事業の部署を社長直属に位置づけることで、組織内での立場が明確になります。経営トップの直轄組織であることが周知されれば、他部署からの協力も得やすくなるのです。
社長直下の体制には以下のようなメリットがあります。
- 意思決定のスピードが速くなる
- 承認フローが簡素化される
- 他部署からの協力を得やすくなる
- 経営層の全面的なバックアップを受けられる
経営層からの全面的なバックアップがあることを示せれば、担当者の心理的な安心感も高まります。孤立感が軽減され、業務に集中しやすくなるでしょう。
業務内容の整理と優先順位付け
まずは現在抱えている業務を全て洗い出し、可視化することから始めます。タスク管理ツールや表を使って、どの作業にどれだけの時間と労力がかかっているかを明確にしましょう。
全体像が見えたら、優先順位をつけていきます。業務を以下の3つに分類すると、取り組むべきことが整理されます。
- 今すぐ必要な業務
- 後回しにできる業務
- 他者に任せられる業務
属人化を防ぐため、業務の標準化も進めていきます。マニュアル化できる部分は文書化し、誰でも対応できる状態を目指します。業務の整理は、外部支援を検討する際の判断材料にもなります。
他部署への協力要請と連携強化
他部署の協力を得るには、依頼の仕方を工夫する必要があります。抽象的な頼み方ではなく、「30分だけ相談に乗ってほしい」「資料の確認だけお願いしたい」といった具体的で短時間の依頼にすると、相手も応じやすくなります。
定期的な情報共有も効果的です。新規事業の進捗や意義を継続的に伝えることで、理解と信頼関係を構築できます。
一方的に頼むのではなく、「頼られる関係」を築く意識が大切です。相手の立場や状況を理解し、win-winの関係を目指すことで、長期的な協力体制が生まれます。
複雑な業務のアウトソーシング(外部発注)
社内リソースだけで対応しきれない業務は、外部への発注を検討します。デザインや資料作成だけでなく、「プロトタイプの開発」や「技術選定」など、専門性が高いエンジニアリング領域こそ、プロに任せることで劇的に効率化が図れます。
外部に任せる範囲を明確に定義し、社内では戦略立案や意思決定に集中する体制を作ります。役割分担が適切に行われれば、開発スピードと品質の両方が向上します。

コスト面で躊躇する場合もありますが、担当者の負担軽減と事業推進のスピードを考えれば、投資する価値は十分にあります。外注先の選定には時間をかけ、信頼できるパートナーを見つけることが重要です。
コンサルタントやメンターの導入
新規事業の経験が豊富な外部の専門家に相談できる体制を整えます。コンサルタントは戦略面でのアドバイスを提供し、進むべき方向性を明確にしてくれます。
メンターは精神的なサポート役として機能します。悩みや不安を相談できる相手がいるだけで、心理的な負担は大きく軽減されます。
社内に適切な人材がいない場合、外部の力を借りることで新規事業のノウハウも蓄積されていきます。専門家との対話を通じて、担当者自身の成長にもつながるのです。
人事評価制度の見直し
既存事業と同じ基準(ミスをしないことが重視される減点主義)で評価すると、失敗確率の高い新規事業の担当者は委縮してしまいます。挑戦そのものを評価する加点主義や、プロセス評価を導入することが重要です。
- 短期的な数値目標だけでなく検証の質も評価する
- 学習プロセスや改善の取り組みを評価対象にする
- 失敗から得た学びを評価する仕組みを作る
- 長期的な視点での目標達成度を測る
評価制度が整備されれば、担当者のモチベーション向上につながります。頑張りが認められる環境があれば、困難な状況でも前向きに取り組めるでしょう。
具体的かつ短期的な目標(マイルストーン)の設定
長期的な目標だけでは、日々の進捗が実感しにくくなります。数週間から数か月単位で達成できる短期目標を設定し、マイルストーンとして明確化します。
小さな成功体験を積み重ねることで、チーム全体のモチベーションが維持されます。短期目標をクリアするたびに、達成感を味わえる仕組みを作るのです。
進捗を可視化し、関係者と共有することも大切です。目標達成のプロセスを言語化して伝えることで、周囲の理解も深まっていきます。
新規事業立ち上げがきついと感じないようにする予防策

これから新規事業を始める、あるいはリスタートする場合、以下の予防策を講じることで「きつい」「しんどい」状況を未然に防ぐことができます。
- 立ち上げメンバーの厳選
- 徹底した事前リサーチと市場調査
- 担当者のスキルアップと学習
- 想定される課題の洗い出しと事前対策
- 相談できるメンターやパートナーのアサイン
ここでは立ち上げ前に実施すべき5つの予防策を紹介します。
立ち上げメンバーの厳選
新規事業に向いている人材を選定することが、成功への第一歩となります。曖昧な状況を恐れず、前例のない取り組みに対して批判より行動を優先できる人が適しています。
新規事業に向いている人材の特徴は以下の通りです。
- 曖昧なグレーゾーンを恐れず動ける
- 新しい取り組みに批判より行動で応える
- スピード感を持って意思決定できる
- 論理的思考で課題を整理できる
- 顧客に対する解像度が高い
- コスト意識を常に持っている
- 社歴や役職に関係なく他部署に遠慮なく要望を出せる
強力なチームを結成できれば、大きな問題が起きても協力して乗り越えることができ、ネガティブな気持ちを抑制できるでしょう。
徹底した事前リサーチと市場調査

新規事業の成否を左右するのが、事前のリサーチです。市場規模、競合状況、顧客ニーズを徹底的に調査し、事業の勝算を見極めます。
立ち上げ後にニーズがないことが判明すれば、それまでの投資が無駄になります。リサーチにかけるコストは必要経費と捉え、妥協せずに実施することが大切です。
調査結果をもとに仮説を立て、検証の計画も立案します。何を確認すべきか明確にしておくことで、立ち上げ後の軌道修正もスムーズに行えます。
担当者のスキルアップと学習
新規事業に必要なスキルを事前に棚卸しし、不足している部分を特定します。財務、法務、マーケティングなど、苦手な分野があれば早めに学習を始めましょう。
外部研修への参加や書籍での独学、専門家への相談など、複数の方法を組み合わせて知識を補強します。完璧を目指す必要はありませんが、基礎的な理解があるだけで業務の進め方は大きく変わります。
チーム全体でのスキルアップも重要です。勉強会や情報共有の場を設けることで、メンバー間の知識レベルを底上げできます。
想定される課題の洗い出しと事前対策
新規事業で起こりうるリスクを事前に洗い出し、対策を考えておきます。資金不足、人材不足、市場ニーズとのズレ、協力体制の不足など、内外のリスクを具体的にリストアップします。
各リスクに対して、発生確率と影響度を評価し、優先的に対処すべき課題を明確にします。完全に防げないリスクでも、早期発見の仕組みを用意しておくことで、被害を最小限に抑えられます。
リスク管理の計画を立てておくことで、想定外の事態が発生しても冷静に対応できます。事前準備があれば、立ち上げ初期の混乱を抑えられるのです。
相談できるメンターやパートナーのアサイン
新規事業では予期せぬ問題が発生するため、気軽に相談できる相手を確保しておくことが重要です。社内の経験者や外部の専門家など、複数の相談先を持っておくと安心です。
メンターには定期的に状況を報告し、アドバイスを受ける習慣をつけます。一人で抱え込まず、早めに相談することで、問題の深刻化を防げます。
信頼できるパートナー企業との関係構築も有効です。技術面や運営面でサポートを受けられる体制があれば、困難な局面でも前に進めます。
新規事業立ち上げに関するよくある質問(FAQ)

新規事業の立ち上げに関して、多くの担当者が抱える疑問に答えます。
- 新規事業開発に必要なスキルセットとは?
- 新規事業立ち上げがきついときに休んでもいい?
- 部署の協力をスムーズに得るコツはある?
実務で直面しやすい3つの質問を取り上げ、具体的な解決策を提示します。
- 新規事業開発に必要なスキルセットとは?
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多岐にわたりますが、特に「課題発見力」「仮説検証力」「プロジェクトマネジメント力」の3つが重要です。すべてを一人で持つ必要はなく、チームや外部パートナーで補完し合うのが成功の鍵です。
- 新規事業立ち上げがきついときに休んでもいい?
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はい、休むべきです。新規事業は長期戦であり、担当者が倒れては元も子もありません。一時的な休息は、俯瞰的な視点を取り戻し、事業のボトルネックを冷静に見直す良い機会になります。
- 部署の協力をスムーズに得るコツはある?
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「Win-Winの提示」と「小さな実績の共有」です。協力が相手部署にとってもメリットになる文脈を作るか、あるいは小さな成功(初期の売上や顧客の声)を共有して「乗っかる価値がある船だ」と思わせることが、協力を引き出すコツです。
まとめ:新規事業立ち上げがきついのは自然なこと
新規事業の立ち上げで「きつい」と感じるのは、決して特別なことではありません。不確実性が高く、既存事業とは異なる課題に直面するため、困難を感じるのは自然な反応です。
重要なのは、きつさの原因を正しく理解し、適切な対処を行うことです。部署間の協力体制を整え、業務を整理し、外部の力も活用しながら、無理のない形で事業を進めていきます。
事前の準備と適切な体制づくりによって、多くの困難は軽減できます。一人で抱え込まず、チームや専門家と協力しながら取り組む姿勢が、新規事業の成功につながるのです。
新規事業の立ち上げで行き詰まりを感じている場合、Incubation Baseのような専門家の支援を検討する価値があります。構想段階から検証、実行フェーズまで一貫して伴走し、戦略提案だけで終わらない実行重視の支援を提供しています。経営と技術の両面を理解するチームが、小さく試しながら前に進むプロセスを設計し、事業が実際に動き出すところまでサポートします。
新規事業の「きつさ」を一人で抱え込まず、経験豊富なパートナーと共に歩むことで、成功への道筋が見えてくるでしょう。